日本の料理文化に魅せられ15年 「ブルガリ イル・リストランテ」を率いるルカ・ファンティンの料理哲学とは
ネットフリックスのリアリティショー「白と黒のスプーン」の審査員でお馴染みのソンジェをはじめ、世界的に有名なシェフと共演できるのもファンティンの“イタリアン”の枠を超えた探究心と料理の新たな可能性への追求から。「モス」とのコラボレーションメニューは、サンマなどの旬の日本の食材を中心に、イタリアと韓国の食材、調味料を用いて絶妙なバランスで仕上げられた。日本の食材を軸に、イタリアンと韓国料理、お互いを引き立てつつ異文化が融合し、今までに味わったことのない味覚の発見だった。このように、世界のトップシェフによる新たな美食体験ができるのも「イル・リストランテ」の魅力の一つだ。
料理哲学は“控え目な美しさ ”滋味深い味わいを探求 ファンティンの美食の定義は、“食材の本質を引き出すこと”。高価な食材を使うのではなく、シンプルな素材であってもその味わいを最大限に引き出して味覚の中に自然の風景を再現することだという。高級レストランの料理は、盛り付けや見た目の美しさも大切。だが、彼は、視覚的なの美しさに頼ることなく、滋味深い素材を用いた味わいにこだわっている。
麗しい見た目よりも、滋味深さを重要視する“控え目な美しさ”を料理哲学とするファンティンにとって食材探しは、情熱の一つ。チームで四季折々の食材を求めて日本全国を訪れる。魚介類や肉類、野菜などはもちろんのこと、サフランといったスパイスまで、北から南まで生産者を訪問し、ベストな食材を選んでいる。「イル・リストランテ」で人気メニューのウニのパスタは2009年から提供しているが、産地を変えるなどして変化しているという。今年は、岩手でウニの再生養殖などを行う作り手からのムラサキウニを使用。特別な一皿を届け続けられるように、品質の良さはもちろんのこと、海洋生態系の保全につながる活動をする生産者から積極的に食材を仕入れている。
ファンティンは、次世代のシェフを育てる活動にも情熱を注いでいる。「ブルガリ」のラグジュアリーな世界観を「イル・リストランテ」を通して表現し続けるために、料理の未来を形作ること。それが、彼自身が掲げる今後のビジョンだ。