忘年会で泥酔した夫が同僚に抱きつき…突然「性犯罪者の妻」となり、仕事・金・家を失った40代女性の苦しみ
■法的な責任はないが、同調圧力には逆らえなかった その責任は、夫にあるはずなのに、なぜ再び肩代わりをしたのか。 「夫がこういう事件を起こすのは、妻が満足させていなかったからだと言われています……」 世間にそうした偏見はあるかもしれないが、玲子は十分、夫の面倒を見てきたはずだ。 「私も夫も生まれ故郷で結婚し仕事をしていました。今回は同じ職場で起きた事件ではありませんが、被害者や関係者に知り合いがいます。夫婦だった以上、何もしなければ、これから先、何を言われるのかわかりませんから……」 実際、周囲からの誹謗(ひぼう)中傷はあったのだろうか。 「面と向かって私に批判的なことを言う人はいませんが、そういう空気を感じるんです」 妻に法的責任はないが、家族連帯責任という同調圧力には逆らえないという。 最初の事件の後、玲子と夫は子どもが欲しいと不妊治療を始めていた。玲子は治療費による借金を抱えており、離婚後、副業もしていたが過労で体調と精神のバランスを崩してしまった。現在は、病院に通いながら生活保護で暮らしている。 ■事件後にかかった費用は700万円以上 ②住居侵入・強制わいせつ容疑で逮捕された大学生家族のケース 神田百合子(40代)の長男(20代)は、都内の私立大学に通う大学生だが、女性宅に侵入し女性にわいせつ行為を働き逮捕された。被害は1件にとどまらず、4件の住居侵入と強制わいせつ罪で逮捕・起訴された。 「息子は一浪していて、志望校に合格したばかりだったんですが、まさかこんな事件を起こすなんて……。本人は、受験のストレスだっていうんです」 百合子は専業主婦で、これまで夫の給料だけで生活してきた。長男の下に高校生の妹がおり、これまでは比較的、ゆとりのある生活を送っていたが、事件によって生活は一変した。 百合子は、被害者4人に対して総額約500万円を支払った。自宅は、被害者宅からそう遠くなく、転居して欲しいという被害者もおり、自宅を売却しなければならなかった。 「古い一軒家でぜんぜん値が付かなくて……、物を処分するのもお金がかかるし、転居先を見つけるのも大変でした」 転居費用や弁護士費用など、事件後に要した費用総額は700万円を超えた。本件でも、親だからといって必ずしも弁償しなければならない義務はない。 「息子は大学も退学となり、刑務所です……。彼にこの先、賠償できる力などありません……。せめて、親の責任としてできることはしてあげたいと思いました」