広島災害の教訓―変わる地名、消える危険サイン
一方、福和教授が気に入っているのは千葉県の「津田沼」。明治期に5村が合併したとき、中核となった谷津、久々田、鷺沼の3村の地名から一字ずつ取ったそうで、「災害危険度の高い漢字だけを組み合わせた点に先人の知恵を感じる。西東京市などといった不可思議な地名を好む現代人とは感性が異なっていたのでは」。 同様に、福島県の浪江町も「危険度の高い」地名をあえて残しています。実際に震災で津波の直撃を受け、さらに原発事故という困難に直面しましたが、「なみえ」というやわらかい響きを生かしたまちづくりに健闘していると言えるでしょう。こうした負のイメージを包み隠さないことをむしろ評価する価値観の転換が今、私たちに求められているのかもしれません。 なお、福和教授らの研究は地盤に注目しているため、前述の土砂災害を警告する「山」や「岩」はむしろ良好な地名に分類されます。さまざまな情報を重ね合わせて判断する「読解力」も必要だと言えそうです。 (関口威人/ジャーナリスト)