外交の〝聖域〟外務省機密費に捜査2課がメス 巨額流用明らかに 警視庁150年 112/150
平成13年、外務省は不祥事に揺れた。年明け早々、元要人外国訪問支援室長=当時(55)=が、機密費を流用していた疑いが浮上する。外交の潤滑油ともいわれる機密費は領収書不要、支出内容も非公開という〝聖域〟とされていた。 元室長は5~11年に計46回の首相外遊の準備を担当。随行員らの宿泊費などは機密費から支出し官邸から現金で受け取っていた。6年3月ごろから機密費を自己名義の口座に入金し、首相外遊の経費はクレジットカードで決済。請求額を大幅に水増しし、競走馬やマンション、ゴルフ会員権の購入などに充てていた。 元室長は知人女性や親族の口座を駆使して出入金を繰り返し、隠蔽(いんぺい)工作まで図っていた。外務省の告発を受けた捜査2課は、元室長が管理していた20以上の口座を精査し官僚ら700人以上を聴取。約5億6千万円の機密費流用を立証。13年3月10日、詐欺容疑で元室長を逮捕した。 捜査2課は7月にも九州・沖縄サミットに絡む経費の詐取で外務省の中堅幹部らを逮捕。外務省の組織ぐるみの裏金も発覚した。当時の田中真紀子外相は「伏魔殿のようなところ」と称し、人事や機構の改革が進められた。(外崎晃彦)