IMF、世界経済の成長率見通しを小幅に上方修正-リスクも警告
(ブルームバーグ): 国際通貨基金(IMF)は、米国と一部の新興市場の好調を理由に今年の世界経済成長見通しを小幅に上方修正した。インフレと地政学的リスクが続く中、見通しには依然として注意を要すると警告した。
16日に発表された最新の世界経済見通し(WEO)では、今年の世界経済成長率を3.2%と予想。1月時点の予測から0.1ポイント引き上げた。2025年の成長見通しは3.2%で据え置いた。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)は、今年の世界成長率を2.9%、来年を3.1%と予想している。
見通しの上方修正にもかかわらず、IMFは高い借り入れコストと財政支援の引き揚げが短期的な成長の重しとなっていると指摘。中期的な見通しは過去数十年で最も弱いままで、生産性の低さと世界的な貿易摩擦が理由だと論じた。
IMFのチーフエコノミスト、ピエールオリビエ・グランシャ氏はWEO発表に伴うブログで、執拗(しつよう)なインフレと世界的な不平等の拡大に言及し、「多くの課題が残っており、断固とした行動が必要だ」と呼び掛けた。
世界経済は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後、最悪のスタグフレーションの危機は回避したものの、今後数年間は潜在成長率が伸び悩むとの見方をIMFは示した。
中央銀行のインフレ対策は正しい方向にあるが、勝利を宣言して金融緩和を行うのは時期尚早だとし、同時にウクライナと中東の戦争に起因する成長へのリスクは特に大きいと指摘した。
IMFはまた、低所得国の成長率見通しを引き下げ、世界の残り地域と比べ弱い成長にとどまると懸念を表明。これらの国々は、ドル高や食料、燃料、肥料価格の高騰により、予想を上回るインフレに見舞われている。
「米経済は既にパンデミック前のトレンドを超えて成長している。しかし、パンデミックと生活費危機からの立ち直りにまだ苦労している多くの低所得国には、追い打ちがかかると予想される」とグランシャ氏は分析した。