IMF、世界経済の成長率見通しを小幅に上方修正-リスクも警告
今後についての下振れ要因としてはウクライナや中東での戦争がインフレをあおり、金利上昇期待を助長し市場とセンチメントを圧迫するリスクがあるとみている。
中国の不動産問題や、主に米中の戦略的競争によって世界経済の分断が悪化するリスクにもIMFは触れた。
上振れ方向のリスクとしては、インフレ率が予想以上に鈍化し、中銀が早期に政策緩和を実施する可能性を挙げた。
2022年に数十年ぶり高水準に達したインフレはその後、積極的な利上げサイクルのおかげで鈍化してきた。しかし、米国を含む一部の経済大国では、まだ目標に達するほど低下してはいない。それでも、IMFは今年後半のある時点で主要先進国・地域が利下げに転じると予想している。
世界の消費者物価は平均で恐らく今年5.9%、来年4.5%上昇すると見込まれ、いずれも1月時点の予測から0.1%ポイント引き上げられた。
今年の米成長率見通しについては、1月時点の2.1%から2.7%に引き上げた。ユーロ圏はおよそ2年にわたる金融引き締めとエネルギー価格上昇の影響が遅れて表れるとして、若干下方修正した。
中国は今年4.6%、来年4.1%成長となる見通しで、1月の予想から変更なし。不動産セクターと内需の弱さが経済活動を圧迫する見込みだ。過剰に生産した製品を輸出する中国と他国の貿易摩擦が生じる可能性があるとも、IMFは警告した。
ロシアは主要国の中で最も大きく成長見通しが引き上げられた。IMFは世界的な原油価格上昇の中でインドと中国への石油輸出が好調なことを理由に、今年は3.2%、来年が1.8%と、それぞれ0.6ポイントと0.7ポイント上方修正した。インドの今年の見通しは6.5%から6.8%に引き上げられた。
IMFはまた、異例なほど強く米国を批判した。最近の米国の経済パフォーマンスは「印象的」であり、世界の成長の主要な原動力となっているが、その一因は「長期的な財政の持続可能性を逸脱した」財政政策にあると分析。