長野県が水力発電を世田谷区に販売開始 再生エネで地方と都市の連携づくり
長野県企業局は豊富な雪解け水から発電した電力を4月1日から東京・世田谷区の区立保育園向けに販売・送電開始しました。企業局によると地方自治体が東京の自治体(特別区)向けに水力電力を販売するのは全国で初めてで、再生エネルギー活用に取り組んでいる世田谷区とのコラボ事業。豊富な水力など再生可能エネルギーに注目した地方自治体同士の新たな経営戦略として注目を集めそうです。 【写真】電力小売り 一足先に「自由化」を活用する東京・世田谷区
高遠と奥裾花から区内の40保育園に
長野県企業局は「単なる売電で終わらせず、これをきっかけに電力販売地域との交流に努め、発電所の見学ツアーなども予定したい」と、“電力を通じた響き合い”も計画。地方創生や地域間交流のきっかけにしたいとしています。 企業局によると、4年前から整備してきた同県伊那市の「高遠さくら発電所」(最大出力180キロワット時=約350世帯分)と、長野市の「奥裾花(おくすそばな)第2発電所」(最大出力980キロワット時=約1400世帯分)の2基の水力発電所の電力を4月から丸紅が出資する新電力会社に販売。同社と連携する電力販売会社の「みんな電力」(世田谷区)が世田谷区と契約し、これらを通じて電力を同区に販売します。名古屋、大阪方面などの企業、個人顧客への販売契約にも取り組んでいます。
世田谷区に販売される分は、区立保育園50か所のうち40か所に供給を始めました。このほか「企業や個人からの契約の引き合いが多数寄せられており好調」(企業局)としています。 電力の販売価格は、これまでの中部電力への販売価格が1キロワット時9円だったのに対し、丸紅新電力へは高遠さくら発電所の発電分が34.5円、奥裾花第2発電所の発電分が29.5円と有利。これは電力会社に再生可能エネルギーの買い取りを一定額で義務付ける「固定価格買取制度」によるもので、発電所により価格差があるのは「発電所により発電コストが異なるため」(企業局)。再生可能エネルギーの買い取りコストは広く消費者が負担しています。