長野県が水力発電を世田谷区に販売開始 再生エネで地方と都市の連携づくり
再生エネ利用率25%を掲げる世田谷区
今回の売電契約で長野県は年間約2億円の売り上げを見込んでいます。一方、世田谷区は電力の買い取り価格がこれまでの東京電力より8~10%軽減されるため、試算では保育所分だけで年間500万円ほど電気代の負担が減る見込み(企業局)です。 世田谷区は保坂展人(ほさか・のぶと)区長(現在2期目・社民党元衆院議員)がかねて環境エネルギーの活用を呼び掛け、区の施策にも導入。群馬県川場村の木質バイオマス発電の電気を区民が利用できるシステムの構築や水素エネルギーの活用、神奈川県三浦市内の区有地での太陽光発電と売電などに取り組んできました。 長野県からの受電も、世田谷区が掲げている環境目標「再生エネルギー利用率25%」に沿ったもの。世田谷区は「川場村の例のように都市と地方が電力・エネルギー事業で結び合う取り組みを広げたい」としており、今回も多角的な地方と都市のエネルギーネットワークづくりの一環との位置付けです。 同区はこうした取り組みのメリットとして、(1)公共施設が率先して再生可能エネルギーを利用することで区民への普及・啓発、子どもらの環境教育に役立てることができる、(2)電力の販売・受電を通じて自治体間の連携が図られ、今後のさまざまな交流のきっかけになる可能性がある――などを挙げています。
長野県は水力発電を増設する方針
今回売電を決めた長野県には企業局の水力発電所が16か所あり、2019(平成31)年度末までには19か所まで増やす方針。並行して大都市の個人顧客などを対象に長野県の発電所の見学ツアーや県産品のプレゼントなども検討し、世田谷区と同様に売電、受電だけの関係ではなく地方と都市の交流のきっかけにしたい考えです。 長野県企業局は、これまで電気、住宅、用地開発、有料道路、観光施設、ガス、水道事業などを行ってきた独立採算の公営企業。事業の移管などで現在は電気、水道の2事業を行い、これら県内公営企業の経営戦略を策定しています。
--------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説