ヒズボラが頼ったポケベル「ローテク作戦」の盲点とは?...サイバーセキュリティのプロが説く
ポケベル流通過程に介入
一方、受信専用で送信機能を持たないポケベルの場合、ユーザーの位置情報の取得は格段に難しい。さすがのイスラエルも、ポケベルしか持たないヒズボラ構成員の居場所はつかめない。だからイスラエルはポケベルの流通過程に介入し、それが彼らの手に渡る前に細工を施した。 01年9月11日の米同時多発テロ事件の首謀者ウサマ・ビンラディンが、あれほど長く潜伏できたのも、携帯電話やパソコンによる通信を避け、人手に頼って情報を送受していたからだ。 これも一般論だが、非対称的な紛争では、たとえ戦闘能力や資金力で劣っていても、あえてローテクの武器や戦術を駆使することで戦いを有利に進められる場合がある。 良い例が、02年に米軍が実施した大規模な軍事演習「ミレニアム・チャレンジ」だ。 このとき敵軍役の赤チームを指揮した海兵隊のポール・バン・ライパー大将は青チームのハイテク監視網をかいくぐり、バイク便による命令伝達といったローテク戦術を駆使して演習開始からわずか24時間で勝利を確実にしたのだった(青チームの勝利を想定していた米軍上層部は大恥をかいた)。 だからヒズボラやアルカイダのようなテロ組織はスマートフォンを使おうとしない。敵による監視や追跡を避けるためだ。この点は善意の市民も心しておくべきだろう。 いずれにせよ、サイバーセキュリティーのプロとして言わせてもらえば、どんなに便利そうなデバイスも油断は禁物だ。あなたの手に届く前に、どこかで誰かが悪質な細工を施している可能性は、決して排除できない。 The Conversation Richard Forno, Principal Lecturer in Computer Science and Electrical Engineering, University of Maryland, Baltimore County This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
リチャード・フォーノ(メリーランド大学ボルティモア校講師)