reGretGirl×Laughing Hick 親和性の高い両者が、素晴らしき化学反応を起こした夜『Grasshopper vol.25』ライブレポート
そんな熱演を受けて立つreGretGirlは、助走なしにまずは新曲「純ラブ」をおもいっきり鳴らしていく。シティポップ的匂いもあるが、そこに彼ら特有の情熱が加わり、他にない仕上がり。平部雅洋(vo/g)の伸びやかな歌声に十九川宗裕(b)のコーラスが重なったときの浮遊感、メリハリの効いた展開やサビの華やかさ、観客をグッと惹きつけるには十分すぎる幕開けだ。 「よっしゃ!」と平部が大きな声を上げ、地元である大阪を歌った「ルート26」へ。ドライブ感抜群でいつ聴いてもワクワクする曲だ。ワンマンやフェスではサポートメンバーを加えた5人編成でステージに立つことも多いが、ライブハウスで見せる3ピーススタイルは原点であり、まさしく鉄壁。平部、十九川、前田将司(ds)によるトライアングルの揺るがなさがとても頼もしい。そこで生まれた勢いをさらに加速するべく「Shunari」をドロップし、大きく揺らしたり、小気味よく刻んだり、ビートを的確に操ることでどんどん前のめりにもなっていく観客。感情を開放するように叫び、飛び跳ね、平部が思わず「暑っ!」とこぼすほどの温度になっていく。 ここで改めてイベントへの謝辞を述べた後、「8月2日、今日はここは渋谷/Laughing HickとGrasshopper/愛し合いたくて会いに来ました/どうすか、調子?/行けますか、渋谷?」と平部がフリースタイル的口上を決めて始まったのが「ギブとテイク」。ソリッドなギターリフ、しっかり低音も効かせながらフロア全体を持ち上げるパワーがいい。観客もそのグルーヴに身を任せて踊り、さらなる盛り上がりを見せていく。 いいビート感で前田のフレーズも際立つ「テレフォン」、振り切ることができない失恋を歌い、その後悔や女々しさが心に響く「二色浜」を続けた後、ライブを引き締める存在にもなっていたのが「ダレヨリ」だった。「簡単でホントに単純で、すごくすごくシンプルな思いを」と平部がつぶやき、決して叶わぬ片思いを歌い上げていく。まっすぐにフロアを見つめながら真摯に紡ぐ言葉と音、その深みが思いの大きさを表しているようでもあり、強い感銘を受けるのだ。 そして、もはやアンセムとなっている「tear」を始まる前に、「最近、すげえ凹むことが多くて。思い通りに毎日っていけへんやん。SNSとか見てたらさ、心が痛くなることも多いし。目の前にいないのに簡単に叩けるようになって......いなくなっちゃうヤツとかおるんよね。オレの友達にもそういうヤツがいて、それを思って書いた歌を歌いたい」と平部が曲へ込めた思いを語った後、バンドとしてのスタンスや在り方を伝える姿もまた印象的だった。 「自分に託された思いがすげえ大きくなって、潰れそうになってしまうこともあるけど、それでもめげずにいきたいし。いつも周りに支えてくれるモノがあって。ライブもそうやし、きっとLaughing Hickもそうやし、reGretGirlもそうやと思う。音楽に救われるシーンとかいっぱいあると思う。そんなときにさ、そばにおらせてくれよ。そんなときにさ、隣にいてくれよ」(平部) そんな透き通った情熱を受け取ってから、響き渡る「tear」の温かさと優しさは本当にたまらなかった。全体に投げかけるのではなく、一人ひとりに向けて届く曲。十九川と前田のプレイやコーラスも頼もしく、この3人を信じられる確信をより実感したタイミングにもなったはずだ。 そこからもっとアゲていこう、と「ルックバック」をプレイし、会場はまさしく最高潮へ。観客の声援と拍手に背中を押されながら平部も声を振り絞り、「ガチンコツーマンやと思ってるから、アンコールはやりません」と宣言し、ラストナンバーとして選んだのは「ホワイトアウト」。ド頭からとんでもないシンガロングが起こり、気持ちを受け取った3人はアグレッシブに攻め立てる灼熱のステージング。感情を止めどなく溢れさせながら歌い叫び、リズムワークも抜群。最高のフィナーレを飾ってくれた。 シーンの先頭集団に甘んじることなく最前線へ駆け抜けていこうとしているreGretGirl、10月からスタートするワンマンツアーも東名阪はすでにソールドさせ、まさしくネクストブレイク筆頭なLaughing Hick。次世代バンドのショーケース的な、いつもの『Grasshopper』とは少し趣向が異なっていたが、ありそうでなかったツーマンであり、新たな発見が生まれた夜になったことは間違いない。加えて、こういった秀逸なツーマンを提示した『Grasshopper』が今後どういったアーティストを注目していくのか、そちらにもより興味が深まった夜となった。 Text:ヤコウリュウジ <公演情報> 『Grasshopper vol.25 supported by チケットぴあ』 2024年8月2日(金) Spotify O-nest 出演:reGretGirl/Laughing Hick 【セットリスト】 Laughing Hick 01.愛してるって 02.ホンネ 03.モノクロセカイ 04.さよなら恋人、おかえり恋心 05.休憩と宿泊 06.女だから 07.カフェオレ 08.カシスオレンジ 09.Bye-Hi reGretGirl 01.純ラブ 02.ルート26 03.Shunari 04.ギブとテイク 05.テレフォン 06.二色浜 07.ダレヨリ 08.tear 09.ルックバック 10.ホワイトアウト <次回公演情報> 『Grasshopper vol.26 supported by チケットぴあ』 2024年9月8日(日) 18:30開場/19:00開演 会場:Spotify O-nest 出演:えんぷてい/goethe/Geloomy