12月の追加利上げは「オントラック」か 物価は見送りでもおかしくないが…日銀の見通し通り、利上げ決定の可能性が大
【森永康平の経済闘論】 12月18、19日、日本銀行による年内最後の金融政策決定会合が開催される。関心が集まるのは7月以来の追加利上げが行われるかどうかだ。 【表】「4人家族で1カ月に必要な金額」京都総評の試算と内訳 追加利上げを決めた際に公表した資料には「見通しが実現していくとすれば、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整」という記述があるため、7月時点から経済の見通しに大きな変化がない限り、12月に追加利上げをする可能性は高いだろう。 11月18日に名古屋で行われた植田和男総裁の講演内容をみると、利上げの可能性を強く感じさせる点はなかったものの、同時に経済の見通しを下方修正するような表現もなかった。 同日に行われた記者会見の内容をみると、利上げを行った7月以降のデータもオントラック(見通し通り)であるという発言があった。しかも9月の金融政策決定会合では個人消費については7月の「底堅く推移している」から「緩やかな増加基調にある」と上方修正しており、オントラックどころか、経済の見通しは強含んでいるという認識になっている可能性もあるため、やはり12月の会合で利上げを決定しても違和感はない。 また、会見の中で「円安がコスト高になっている」という発言もあったが、7月の利上げ後に一時1ドル=140円割れ目前まで円高水準になったドル円相場も足元では再び150円台で推移していることから、現在の為替水準もまた利上げの可能性を押し上げると考える。 もちろん、為替を理由に金融政策を変更するなどあり得ないことは理解しているが、円安を気にする発言が続いていることから、ついつい円安傾向にあるドル円相場が意思決定に多少なりとも影響を与えるのではないか、と懸念するのだ。 日銀は2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を掲げている。総務省が公表している消費者物価指数のデータをみてみると、最新の10月分のデータは総合が前年同月比プラス2・3%となっている。しかし、欧米でコアCPIとされる「食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合」は同プラス1・6%であり、6カ月連続で2%を下回っている。 また、日銀が「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」として公表する3つの物価指標のうち、最も高い数値が出やすい刈込平均値は同プラス1・5%となっており、こちらは4カ月連続で2%を下回っている。物価の趨勢をみると利上げを見送ってもおかしくないと考えるが、既に利上げシナリオは既定路線なのだろうか。
■森永康平(もりなが こうへい) 経済アナリスト。1985年生まれ、運用会社や証券会社で日本の中小型株のアナリストや新興国市場のストラテジストを担当。金融教育ベンチャーのマネネを創業し、CEOを務める。アマチュアで格闘技の試合にも出場している。著書に父、森永卓郎氏との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など。