阪神・下村 V奪回最後のピースになる 今年4月右肘手術 来季終盤復帰誓う
阪神の契約更改交渉が19日に兵庫県西宮市の球団事務所であり、1、2軍を通じて登板がなかったドラフト1位ルーキーの下村海翔投手(22)は、150万円減の年俸1450万円でサインした。4月に受けた右肘内側側副じん帯再建術(通称トミー・ジョン手術)のリハビリに励み、現在は40メートルで50球を投げられるまで回復。来夏以降の復帰が見込まれており、シーズン終盤に活躍してVの使者になることを誓った。 下村は来季の復帰だけを見据えていた。昨秋のドラフト1位。日本一連覇への即戦力と期待されながら、ルーキーイヤーは開幕早々に右肘の手術を受けた。以降はリハビリに費やし、今季は1、2軍とも登板なし。「ファンの方の期待に応えられなかったのが悔しい」と振り返りつつも、目標があるから下は向かない。 「来年中にしっかり試合で投げたい。シーズン最後のリーグ優勝、日本一の戦力になりたい」 リハビリは順調に進んでいる。術後は入浴など日常生活も難しい状態だった右肘。今はトレーナーの支えもあり、40メートルのキャッチボールを25~50球程度、中1日で行うまで回復した。「当初のプラン通りに(リハビリを)進められていると思います」。一歩ずつ、当面の目標である1軍登板へ近づいている。 手術の直後はどん底だった。自身に“落ち込んでいない”と言い聞かせていたものの、周りから「顔が暗い」と見透かされていた。「正直、つらかった」。そんな中、同じトミー・ジョン手術経験者の言葉が支えになった。今季13勝を挙げ、侍ジャパンに選出されるまでに飛躍を遂げた才木は、シーズン中に鳴尾浜を訪れるたび、「絶対、大丈夫になるから」と言葉をかけてくれた。10メートル、20メートルと徐々にボールを投げられるようになるにつれ、徐々に下村の気持ちも晴れていった。 「最近は“笑顔が増えたね”と言われます。才木さんたちの言葉は自分自身、凄く支えになりました。早く追いつけるように頑張りたい」 ここまでのリハビリを無駄にしないために、早期の復帰を目指す中でも焦りは禁物だ。「焦ることなく、でも最短最速で復帰できるように。ここからも一生懸命やります」。2年ぶりVへのラストピースになるため、ゆっくりと、確実に歩を進める。(松本 航亮) 【下村の手術とその後の経過】 ▼24年4月11日 右肘内側側副じん帯再建術(通称トミー・ジョン手術)を既に受け、退院したことを球団が発表。 ▼4月12日 鳴尾浜の球団施設で報道陣に対応。「この決断を今後いいものだと言えるように一生懸命取り組みたい」 ▼8月10日 ボールを握った練習を解禁。室内練習場でボールを下にたたきつける投球動作を約20球。 ▼8月27日 屋外キャッチボールを再開。トレーナー相手に、約20メートルの距離で投球感覚を確認。 ▼10月22日 甲子園球場での秋季練習に参加。トミー・ジョン手術を経験している藤川監督からは「焦らず、ゆっくり調整して」と声をかけられたと明かす。 ◇下村 海翔(しもむら・かいと)2002年(平14)3月27日生まれ、兵庫県西宮市出身の22歳。小3から野球を始め、甲武中では宝塚ボーイズでプレー。九州国際大付(福岡)では甲子園出場なし。青学大では東都リーグ1部通算7勝。23年ドラフト1位で阪神入り。1メートル74、73キロ。右投げ右打ち。