EVの逆風で注目高まる「PHEV」がいまひとつメジャーになり切れないのはなぜか?
■ 世界のPHEV戦争に名乗りを上げた「中国勢」のすさまじい技術開発力 そんな前哨戦段階にある世界のPHEV戦争に、中国勢が突然名乗りを上げてきた。6月、BYDが今年5月に発売した新型PHEV2車種について、エンジンの熱効率46.02%とブチ上げたのだ。 プリウスやホンダ「シビック」のエンジンの熱効率は41%台。46%という数値は内燃機関開発の世界では次の段階の目標値で、エンジンの空気の吸い込み量を現在の2倍近くに増やす超希薄燃焼を低公害かつ低コストでどう作るかが実現のカギだった。その実用化を巡って日欧米のメーカーがつばぜり合いを演じていた。 BYDはPHEVの市販車を世界で最初に作ったメーカーではあるが、内燃機関の開発競争で先んじられたというのは先進国メーカーのエンジニアにとっては心中穏やかならぬこと。BYD1社が独走しているのならまだ対処のしようもあるのだが、傘下にスウェーデンのボルボを擁する吉利自動車が「ウチはもうすぐ46.1%のエンジンを出す」と、BYDの発表直後に噛みついた。 「ガソリンエンジンの熱効率46%は50%という中長期目標に向けた重要なマイルストーン。それを複数のメーカーがオレもできると口々に言うあたり、中国の自動車メーカーが恐ろしいスピードで技術水準を上げてきたということ。実際に試験をしてみなければ分かりませんが、それが事実ならわれわれも相当のスピード感を持たないと内燃機関でも勝てなくなる」(日産自動車関係者) PHEVは今のところ、あくまでBEVのバッテリー技術の向上、電力供給の低CO2化などが進むまでのつなぎ技術という存在で、価格の高さからハイブリッドカーに置き換わるほどの商品力はない。 だが、性能向上やコストダウン次第では、一軒家住まいのユーザーやいつでも充電インフラを使えるユーザーにとっては魅力的なソリューションとなり得る。今後の展開に要注目だ。
井元 康一郎