EVの逆風で注目高まる「PHEV」がいまひとつメジャーになり切れないのはなぜか?
■ 平凡な燃費スコアだったジープ「レネゲード」のロードテスト まずは直近の今年5月にロードテストを行ったステランティスのジープ「レネゲード4xe」。レネゲードはクライスラーの親会社、フィアットの前輪駆動プラットフォームを使用して開発されたジープブランドの最小モデルで、原型が出たのは2014年。PHEVは2021年に追加された。 充電率100%でEV走行開始。駆動は後輪アクスルに装備された最高出力128馬力の電気モーターで行う。エアコンを使いながら東京都内を走行したところ、走行距離32.1km、充電率の表示が3%になったところでエンジンを使用するハイブリッド走行に切り替わった。 レネゲードのバッテリーパックは総容量11.4kWhだが、普通倍速充電(200V・30A=6kW)にかかる時間の目安が1時間30分と出ていたので、実際に使っている容量は8kWh台と推察される。電動車に優しい温暖期にもかかわらず1kWh当たりの走行可能距離が4km程度というのは電動車としては良くない数値だ。 その後はハイブリッド走行。ハイブリッドシステムはアイシン精機の6速ATに電気モーター1基を内装したパラレル型で、後輪の電気モーターと合わせて電動AWD(4輪駆動)を行う。1.4リットルターボエンジンと電動パワートレインの合成出力は190馬力もあるので、動力性能はかなり優秀。どの速度域からでも羽根のように軽々と加速した。乗っていて非常に楽しいクルマである。 その半面、燃費は平凡なスコアに終わった。電動走行を含まないハイブリッド走行時の実測燃費は16.6km/リットル。前述の1.4リットルターボエンジンは吸気バルブをカムシャフトではなく油圧で動かすフィアット独自の「マルチエア」テクノロジーが投入されたもの。運転状況によってバルブ早閉じミラーサイクル、バルブ遅閉じミラーサイクル、一般的なオットーサイクル、気筒休止と自由自在に制御可能で、効率が非常に高いのが特徴だ。 そのマルチエアエンジンにハイブリッドを組み合わせてリッター16.6kmというのは期待値を大きく下回った。欧州では同じエンジンにベルト駆動式の簡易ハイブリッドを組み合わせたモデルが売られているが、燃費はそちらのほうがずっと良いだろう。 通常エンジン比で350kgも重くなった車両重量がアゲインストになったのはほぼ間違いないところだ。動力性能面では簡単に大きなアドバンテージを得られても、漫然と作っていてはCO2低減に寄与しないというPHEV作りの難しさが浮き彫りとなった格好である。