小浜ルート「千年の愚行」 京都仏教会が見直し要請 自然と共存「かけ離れる」
●地下水に悪影響と指摘 北陸新幹線敦賀以西の延伸を巡り、京都仏教会は19日、小浜ルートの見直しを求める申し入れ書を西脇隆俊府知事に提出した。同会は清水寺や東寺、金閣など府内の宗派を超えた約1100の寺院で構成しており、小浜ルートの計画は、自然を敬い、共存すべきとする仏教の教えからもかけ離れた「千年の愚行」と強調した。古都での存在感が大きい仏教関係者の意向は、ルート論争に影響を及ぼす可能性がある。 【写真】京都府の西脇隆俊知事に申し入れ書を提出する京都仏教会の宮城泰年常務理事 申し入れ書では、小浜ルートの最大の問題は工事による地下水の水位低下や汚染だと指摘。「京都は水の恵みによって生かされている町」とし、酒造りや京料理などにも影響が出ると訴えた。その上で「東京や大阪などの巨大都市の水と異なり、まさに京都の水は『生かされ生きる水』だ」と主張した。 トンネル掘削に伴う建設残土処理などの課題も挙げ、「市民生活を脅かす問題への視点はあまりにも軽視されていると言わざる得ない」と批判した。また、小浜ルートは京都の名刹(めいさつ)の真下を通ると説明し、国宝や重要文化財への影響を危惧。「到底看過できない。最悪のルートで、見直しが是が非でも必要だ」と非難した。 申し入れ書を手渡した宮城泰年常務理事は「一石を投じ、先の時代に役に立たなければいけないという思い。斟酌(しんしゃく)いただきたい」と述べ、西脇知事は「われわれも適切に、真摯(しんし)に対応していく」と応じた。 仏教会は27日、松井孝治京都市長にも要望書を手渡す予定。関係者によると、京都では同会の発言が府の動きを左右することがあるとされる。 京都では小浜ルートに対する懸念が強まっている。京都府酒造組合連合会は今月2日、酒の品質を大きく左右する地下水に影響を及ぼさないルートになるよう求める要望書をまとめ、松井市長に提出。要望書で「ルートによっては、地下水脈の遮断、井戸の枯渇まで危惧される非常事態」と訴えている。 ●「府民の納得を」意見書を可決府議会、直通便復活も 京都府議会は19日、小浜ルートが府民の納得を得られるよう国に説明責任を求める意見書を賛成多数で可決した。地下水への影響やトンネル掘削による建設残土の処分地確保、工事車両による京都駅周辺の交通渋滞に配慮し、慎重に進めることを求めている。 自民、公明、立憲民主の議員らが入る府民クラブ議員団の3会派が共同で提出した。小浜ルートには「生活や農産業への影響について懸念の声がある」とし、こうした不安を拭い去るよう求めた。 府議会では、3月の北陸新幹線敦賀延伸に伴って敦賀止まりとなった特急サンダーバードについて、京都と北陸を結ぶ直通便の復活を求める意見書が可決された。京都市議会でも可決されている。