「ハリスは突然黒人になった」トランプ“口撃”に焦り、急激な米国社会の変容と米国人の戸惑いを利用か
男性でも女性でもない存在、男性でも女性でもある存在、アジア系でもありアフリカ系でもある存在などもはや二分法で境界線を引くことなど不可能になっている。そして社会は他者が何者であるかについて寛容であれと要求する。 このような急激な社会の変化に不安を抱くアメリカ人も少なくない。トランプが、アメリカをそのようなことのなかった1950年代に戻そうとしている所以であり、それを支持する人は多い。
黒人を一丸にできるか
そもそもボーダーレスな存在は人々を不安にさせるものである。そのためこれまでの二分法で単純に割り切れない、アジア系とアフリカ系(黒人)の両方といった複数のアイデンティティをもつハリスのような存在は時として人々の不安をあおるのは事実である。 ただ、一方でそのような境界線の曖昧化によって救われる人々も多いのも事実である。今回の選挙は、ハリスが体現するボーダーレスなものがアメリカ国民にどれくらい受け入れられるかの試金石と言ってよいかもしれない。 大衆の不安を即座に自分の味方として利用するいじめっ子のやり口にトランプの術は似ており、ある意味その切れ味は天才的といっていいかもしれない。このようないじめっ子トランプに、ハリスは勝てるのだろうか。 ここまでトランプがこだわるのも黒人が一丸となった場合の力を知っており、そしてその一丸となった力は決して自分の有利には働かないとわかっているからといえよう。黒人の力を一丸とさせることができるかはハリスの力量にかかっている。
廣部 泉