「糖尿病」が巻き爪の原因になることをご存知ですか? 放置すると足切断の可能性も…
放っておくと大変? フットケアと予防法とは
編集部: 糖尿病患者は巻き爪になりやすいと聞いたことがあります。 宇都宮先生: その通りです。糖尿病の方は神経障害が起き、知覚神経や自律神経が障害されます。知覚神経が障害されると爪が食い込んで陥入爪の状態となっても痛みに気付きにくく放置されてしまう場合があります。 編集部: 糖尿病患者が巻き爪になると、どのようなリスクがあるのでしょう? 宇都宮先生: 自律神経を障害されることで、汗や清潔環境のコントロールが困難となり感染しやすくなります。爪周囲炎から細菌の侵入を許し、感染が中枢側へ進展する場合も少なくありません。また、糖尿病の方は動脈硬化をきたしやすく、知らないうちに末梢動脈疾患(足の血流が途絶えてしまう病気)を併発している場合もあります。そのような場合、急激に下肢の壊疽の状態に陥り、下肢切断へ至ることもあります。 編集部: 自宅でもできるケアの方法はありますか? 糖尿病患者でとくに気を付けることがあれば教えてください。 宇都宮先生: 大切なのは、「普段から爪のケアを適切におこなうこと」です。変形や肥厚、食い込みなどはないかよく観察してください。白濁して爪が肥厚してくる場合には、爪白癬の可能性もありますので医療機関に相談しましょう。 編集部: 巻き爪を予防する方法を教えてください。 宇都宮先生: 自分の足にあった靴を履く、もしくは圧の測定をおこない、インソールを作成すると良いでしょう。また、その靴でよく歩くことが重要です。足を適切に使って、きちんとケアすることが巻き爪の予防につながります。巻き爪になりかけたときに深爪になるまで爪を切ってしまうと陥入爪になりやすいので注意しましょう。
編集部まとめ
巻き爪や陥入爪は、放置すると痛みや感染のリスクを高めるだけでなく、糖尿病患者にとっては末梢動脈疾患や下肢の壊疽といった重篤な合併症につながる可能性もあるとのことでした。こまめに見ることが少ない足の爪ですが、適切なケアと治療、予防は必要不可欠であることを詳しく解説して頂きました。本稿が読者の皆様にとって、ご自身の足のみならず、身近な人の足の健康を意識して頂くきっかけとなりましたら幸いです。
【この記事の監修医師】
宇都宮 誠 先生(TOWN訪問診療所城南院) 2002年東邦大学医学部卒業。2002年東邦大学医療センター大橋病院循環器内科、2008年京都桂病院心臓血管センター、2013年東京労災病院循環器内科など、高度先進病院で内科専門医・循環器専門医として経験を積む。心臓カテーテル治療を行うとともに、下肢の動脈硬化やフットケアを行う外来診療に従事。2020年より現職。日本内科学会専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会認定医、日本フットケア・足病医学会評議員。