ムーキー・ベッツ戦線離脱から約1カ月 1番・大谷翔平のドジャース打線の現状は?
【ベッツ復帰後に光明照らすロハスの堅守】 守備では、ベッツ不在の間、ベテランのミゲル・ロハスが正遊撃手を務めている。これもいい選択肢になっている。 ベッツは身体能力の高い選手で、右翼手で6度のゴールドグラブに輝き、二塁も守れる。そして今年は初めて遊撃手にチャレンジしたが、このポジションは難易度が高い。今季531.1イニングをプレーし、9失策。責任感の強いベッツは、毎日自主練習に取り組み、新しいポジションを学んでいたが、今回の長期離脱で遊撃手としての成長は止まってしまう。一方のロハスは遊撃手が本職で、今季も242.2イニングを守り無失策。守備範囲は広いし、グラブさばきも軽快、肩も強く正確で、併殺の動きも熟達している。 ドジャースのディノ・イベル三塁ベースコーチは「私に言わせれば、ミゲルは球界でトップ5の守備力を持つ遊撃手」と称賛しており、ベッツとの差は明らかだ。ドジャース首脳陣も10月のポストシーズンに向け、守備で信頼できる遊撃手がどれほど重要かを再認識している。 そのロハスの課題は打力だったが、今季は打率.283、出塁率.327、長打率.428と、レギュラーとして十分な数字を残している。開幕からロハスが安打を打った試合ではドジャースは24連勝、これは新たなメジャー記録にもなった。チームリーダーでムードメーカーでもある彼がこのまま打ち続けられるなら、ロハスが正遊撃手でいいし、ベッツは二塁を守ればいい。現在のギャビン・ラックス二塁手は、守備はうまいが、打撃は打率.211と一向に調子が上がってこない。 デーブ・ロバーツ監督は、ロハスにレギュラーを任せることについて「守備力については議論する必要はない。ムーキーの復帰のタイミングや、ミゲルの体調など、状況次第だ。我々はこの選択肢について必ず検討する」と説明している。 懸念は、ロハスが35歳の年齢で毎日プレーしながら、体調を維持し、よいパフォーマンスを続けられるかどうかだ。過去に足のケガに悩まされたことがあり、今は両足に血流制限(BFR /blood flow restriction)のサポーターを巻いている。血流を一時的に制限することで、筋肉が硬くなるのを防ぎ、ケガのリスクを減らせる。試合前後に約30分間治療を受け、さらに疲労をためないよう試合前の練習時間を減らした。食事や水分補給にも気を配り早く寝るようにしている。ロバーツ監督は「トレーナーの意見を聞きながら、適度に休みを与えていきたい。我々にとって非常に貴重な選手。健康な状態に保ちたい」と言う。 懸念点があるにせよ、ロハスの現状は、ベッツ復帰後の打線・守備のバリエーションに幅を持たせていることは間違いない。
奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki