「トランプはファシスト」… 最終盤の米大統領選で波紋を呼んだ「元側近の重要証言」の中身
性質の悪い冗談ではなかった
またホワイトハウスのスタッフや各省長官など政府関係者は本来、大統領個人ではなく合衆国憲法に忠誠を誓うということもトランプ大統領に教えたが、この点も彼は理解しなかった。そして自分を地球上の最高権力者と考え、自分はやりたいことなら何でもやることができ、政府関係者は憲法ではなく自分に忠誠を誓うものだと信じていたという。 以前からメディアで何度か報じられているように、トランプ大統領はヒトラーを肯定的に評価していたという。「なあ君、ヒトラーは良いこともしたんだよ」と大統領が何度か口にするのをケリー氏は実際に自分の耳で聞いたという。 この発言に対しケリー氏が「大統領、そんな事は決して言ってはいけません。そもそも歴史を正しく理解するなら、ヒトラーの行為に良い事は何一つありません」と諫(いさ)めると、トランプ大統領はその場は一旦口をつぐんだが、後日また同様の発言を繰り返したという。 彼はまた米国の軍人を貶(おとし)める暴言も口にしていたという。戦争で死亡あるいは負傷した兵士のことを「負け犬」や「カモ」と評した。2017年の戦没者追悼記念日にアーリントン国立墓地を訪れたトランプ大統領は、随行したケリー氏に「ここに眠っている兵士たちは一体何の得(とく)があって自分の命を捧げたのか?」と尋ねたという。 ケリー氏は最初、大統領が性質の悪い冗談を言っているのかと思ったが、間もなく本気の発言であることに気付いて信じられない思いがしたという。
切羽詰まったハリス陣営の思惑
以上の新聞記事などが表に出ると、即座にトランプ陣営の広報担当者はケリー氏の発言を「全くの嘘」と否定し、「(ケリー氏は)自分が愚かであることを社会に晒している」と反撃した。 一方、ハリス陣営はケリー氏のこれらの発言に飛びついた。この報道がなされた当日、ハリス氏は有権者との対話集会に臨み、それを放送したCNNの司会者から「貴方自身はトランプ氏がファシストであると信じますか?」と聞かれ、「ええ、信じます」とキッパリ答えている。 この対話集会の中でハリス氏は次のように述べて、トランプ氏が大統領に再選されることの危険性を訴えた。 「(トランプ政権の)主席補佐官、国家安全保障担当補佐官、国防長官、そして副大統領ら側近として彼を間近に見てきた人達の全てが、トランプは大統領になるには不適格かつ危険であると断言しています。この人たちはペンス副大統領を除けば、全員が国家の安全のために尽くした最高位の(元)軍人です。その彼らが、ドナルド・トランプは二度と大統領に就任してはならない、と言っているのです。 これは緊急事態です。ケリー氏が今、敢えて警告を発したのは、もしもトランプが大統領に再選されれば、今度はもうトランプを諫め、その危険な行動を止めた(かつてのケリー氏のような)側近は政権にいなくなるからです。(ヒトラーを肯定する)トランプが大統領執務室に復帰すれば間違いなく独裁者になるでしょう。彼は『合衆国憲法を終わらせる』とまで言っています」 こうしたハリス氏の思い切った発言は、同陣営の現在置かれた状況を反映していると見ることもできる。最近の世論調査では、米国有権者のトランプ/ハリス両候補への支持率は拮抗しているが、実際には選挙結果を左右する激戦州の多くでトランプ氏の方が優勢と見られている。 その主な理由は「経済」や「移民問題」など、米国の有権者が最も気にかけている事柄においてトランプ陣営の政策の方が人気があるからだ。