【高校サッカー選手権】開志学園JSC、北越を一蹴!FW阿部日夏太がハット達成
「自分が決めればチームは勝てる」。後半30分、左手の人差し指を突き出した後、右手の3本の指を誇らしげに胸にかざした。後半だけでハットトリックを達成したFW9阿部日夏太(3年)の活躍で北越を5-0と一蹴。昨年準優勝の開志学園JSCが、ベスト4まで勝ち進んだ。 【フォトギャラリー】開志学園JSC vs 北越 阿部の1点目は先制した直後だった。試合再開した相手ボールを奪いGKとの1対1を冷静に流し込んだ「100点」と自賛したゴール。2点目はゴール左後方からのFKを正面でバックヘッド、3点目は右サイドでハーフボレーを豪快に決めた。エースストライカーの粋を集めた3得点。チーム初戦の3回戦で7点、4回戦で1点を挙げ、これで3試合11得点。「全試合でゴールを決める」と語った大会前の公約を続けている。「得点王を狙っています。じれずに取れるだけ取って、ラストは決勝で自分が決める。それだけです」。 昨年までは持ち前のスピードを生かしたウイング。今年から本職のトップの位置に戻り、得意とするDFラインの裏に抜けるプレーだけでなく、FWとしての幅を広げようとポストプレーなどにも取り組んでいる。その貪欲な探究心はチームプレーにも及ぶ。この試合の先制点は左CKからDF3岡田剛輝(3年)がヘッドで決めたが、PAエリア内へ6人が矢尻のような陣形で走り込むデザインされたセットプレーだった。これを考案したのが阿部。5人がVの字を形作り1人がVの中に入って突っ込んで行くもので、「V字」と名付け、県予選に向けて夏から取り組みこの日の試合まで「隠してきた」(阿部)。1週間前の4回戦ではCK、FK、ロングスローと多くのセットプレーを得たが1つもゴールに結びつけられなかった。そのため、準々決勝に向けて週2回、1時間以上もセットプレー練習だけに集中した。休日も返上して仕上げた。その努力は2得点となって現われた。 「彼らなりに考えて、彼らからセットプレーの練習がやりたいということで時間をそれに当てた。本当は休ませたかったんですがね。(セットプレーには)いろいろなバリエーションがあるのでしょうが、僕はあまり知りません(笑い)。そういうことができるのが今年のチームなんです」。宮本文博監督がにこやかに話した。コーチ陣は選手を信頼して任せ、選手はその信頼に勝利で応える。ケガで戦列を離れていたCBの2人に加え、阿部が「一番相性がいい」というFW20イヴァニツキー・レオ(3年)もこの試合で復帰。チーム一丸となってリベンジするまで、あと2勝に迫った。 (文・写真=いのうえ・しんじゅ)