2年前の地元グランプリはペナルティで出場権喪失「プライド邪魔していた」ガールズケイリン尾崎睦が“再起”果たし6年ぶりの夢舞台へ/インタビュー後編
GI新設で「気持ちのモヤモヤ晴れた」
そんな時期にガールズケイリンにGIレースが新設された。2023年度から始まったガールズケイリンリブランディングで『オールガールズクラシック』『パールカップ』『競輪祭女子王座戦』が新設され、優勝すればグランプリの出場権が付与されることになった。 GIを勝てば、体力勝負ともいえる過酷な賞金サバイバルから解放されるともいえる。このニュースは、苦悩の中にいた尾崎の気持ちに再び火をともした。 「GI優勝という新しい目標ができました。優勝すればグランプリ出場権が付いてくる。ルールがシンプルになり、気持ちのモヤモヤが晴れましたね」
マンネリからの脱却、ライバルから吸収
2023年の1、2月は失格のペナルティであっせんしない処置。レースは走れなかったが、尾崎にとってこの2か月は気持ちを切り替えるいい時間になったそうだ。 違反訓練に参加して他のガールズケイリン選手と交流し、新しい気づきもあった。いままでは無かったことだった。 「失格を2回したことでゼロになりました。何もない状態からスタートしないと変わらないと思った。いままではプライドが邪魔をしていたけど、周りの強くなっていくガールズケイリン選手から学べることは学ぼうと思ったんです。(坂口)楓華や、サム(日野未来)、豊岡(英子)さん。失うものはなにもないし、疑問に思ったことをぶつけて教えてもらいました」 マンネリからの脱却、ゼロからの再スタートと位置づけた2023年。1着回数、優勝回数も徐々に増えていき、11月の競輪祭女子王座戦では決勝進出。優勝でのグランプリ出場までは届かなかったが、復調の手応えは確かにつかんだ。
「恩返しの気持ちで」6年ぶり夢舞台へ!
そして迎えた2024年は年頭からコンスタントに勝利を積み重ね、年間3回のGI戦で全て決勝進出。獲得賞金ランキング2位でグランプリ出場権を獲得した。年末の大一番への出場は、6年ぶりとなる。 「グランプリに出られることになって本当にうれしかった。周りの人のおかげですね。特に平塚のメンバーには感謝です。どんなときでも寄り添ってくれました。成績が悪かったりしてもみんな声をかけてくれる。自分だけだったらここまでできていないと思います。周りの人たちがいたから、もう一度グランプリに出て、喜んでもらいたいって思えるようになったんです」 直前の川崎では優勝することはできなかったが、敗因はオーバーワークとしっかり分かっている。 「今年のグランプリは恩返しの気持ちで走りたい。6年ぶりのグランプリ。出られない期間に得たものはあるし、力を出し切るだけです」 今年のグランプリの舞台は静岡競輪場。108期の卒業記念レースを優勝した思い出のバンクだ。その後にはダメ押しの失格をしてしまい、グランプリ出場権を逃してしまった場所でもあるが「良いこと、悪いことと順番できたならば、次は良いことがあるでしょう」とポジティブに受け止めている。 デビューした当時の夢は「グランプリを優勝して、スーツを着た師匠に敢闘門で出迎えてもらいたい」。グランプリを優勝するという目標を掲げ、ガールズケイリン選手を目指した。 幾多の苦難を乗り越えたどり着いた、6年ぶりの夢舞台。ゼロからはい上がった尾崎睦が全身全霊で大一番に挑む。