「癒やし系」ロボットを受託生産 EMS事業拡大を狙う 製造業の国内回帰捉え
キョウデンプレシジョン 売上高200億円狙う
キョウデン(長野県上伊那郡箕輪町)完全子会社、キョウデンプレシジョン(静岡県伊豆の国市)は、EMS(電子機器受託製造サービス)事業の拡大を進めている。新型コロナ禍以降の製造業の国内回帰などの動きを捉え、都内企業が開発した家庭用ロボット「LOVOT(らぼっと)」の受託生産を昨年開始。グループの強みを生かし、同事業の売上高を2024年3月期の141億円から、27年3月期までに200億円に引き上げる計画を掲げる。 キョウデン本社工場
らぼっとは、ロボット開発のベンチャー企業「GROOVE X」(東京)が2019年に開発。縦約45センチ、幅約28センチで重さ約4・6キロ。搭載のカメラから得た情報を人工知能(AI)が学習してユーザーを認識し、鳴き声や見つめるといった行動パターンを変えられる。こうした「癒やし系」ロボットは単身世帯の増加に伴い需要が高まりつつあり、らぼっとはカメラ経由で家族の様子を確認できるため親の見守りなどにも役立つ。 GROOVE Xは海外企業にらぼっとの量産を依頼していたが、輸入に不利な円安傾向や品質の確保などを理由に、国内への切り替えを模索。ロボットなどを動かす基板の実装から装置の組み立てまで一貫生産が強みで、らぼっとの試作開発に協力していたキョウデンプレシジョンに委託することになった。 同社主力のEMS事業は、プリント基板の設計業務を手がけるキョウデンの案件が入り口になることも多い。現在、半導体製造装置や自動化装置、ロボット関連、顔認証システムの受託製造も。ラボットの生産台数は月300~400台で、EMS全体の2割を占める。 24年3月期のEMS事業の売上高141億円は、新型コロナの感染拡大による製造業の国内回帰の動きも取り込んで過去最高となった。山岸公博取締役は「ノウハウが少ないスタートアップなどを当社グループがカバーしていきたい」としている。
〈キョウデンプレシジョン〉
東芝テック(東京)完全子会社が手がけるプレス加工などの一部事業をキョウデンが買収し、2015年に設立。EMS(電子機器受託製造サービス)事業を手がける。従業員は静岡県伊豆の国市の拠点を中心に約450人。