尹錫悦失脚で韓国との距離を詰め始めた中国、新年早々「韓国滞在の中国人、政治活動に参加するな!」と警告した理由
■ 冷え切っていた尹錫悦大統領と習近平主席の関係 昨年末から、周知のように韓国政治が大変なことになっている。「大の親日家」として知られた尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が職務停止となったこと、そして「反日モンスター」とも言うべき李在明(イ・ジェミョン)「共に民主党」代表が、最有力の次期大統領候補になっていることに、日本では懸念の声が広がっている。今年6月の日韓国交樹立60周年はどうなってしまうのだろうというわけだ。 【写真】およそ半年間空席だった駐韓中国大使として韓国の金浦空港に到着した戴兵氏。その場でメディアを前に演説した ところが、日本とは対照的な観点から、尹錫悦政権の「崩壊過程」を注視している国がある。それは、中国である。尹大統領が外交の軸足を日本とアメリカに移した分、中国とは「疎遠な関係」が続いていたからだ。 特に、尹大統領は2023年4月に訪米した頃から、「力によって台湾海峡の現状を変えようとする中国の試みに反対する」と言及するようになった。これまで歴代の韓国政権がタブー視してきた台湾問題に踏み込んだのだ。そのため、習近平政権も「警戒の度合い」を一気に引き上げた。 尹錫悦大統領と習近平主席は、昨年11月15日、ペルーAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の際に首脳会談を行ったが、それは何と2年ぶりの対面だった。しかも、互いに自国への訪問を要請しあうという「チグハグ会談」となった。両首脳とも自分から相手国へは訪問したくないのだ。 このまま尹大統領の職務が剥奪されれば、今世紀に入って計6人の韓国大統領のうち、初めて一度も訪中せずに任期を終えた大統領となる。尹大統領は、「盟友」の岸田文雄首相とは、計12回も日韓首脳会談を行ったのに、習近平主席に対しては、実に冷淡だった。
■ 中国大使、尹大統領を無視し野党代表と親密 外交官レベルでも、「中韓冷戦」は展開された。2020年1月から昨年7月まで韓国に駐在した邢海明(けい・かいめい)中国大使は、「韓国政府から最も嫌われている大使」とのレッテルを貼られていた。 邢海明大使の方も、まるで尹錫悦政権を無視し、最大野党の「共に民主党」の方を向いて外交活動を行っているかのようだった。2023年6月には、同党の李在明代表と会談した際、「(尹錫悦政権は)アメリカが勝利して中国が敗北するほうに賭けているようだが、そのような者は後に必ず後悔することになる」と凄んでみせた。この時は、尹大統領自らが、邢大使に対して怒りの声を上げたほどだった。 中韓関係がこのような「冷戦状態」だったため、邢大使が昨年7月にソウルを離任した後、中国大使は「空席」が半年近くも続いた。中国外交部としても、「後任の人選」に頭を抱えてしまったのだ。これは日本外務省の外交官も同様だろうが、自国と仲違いしている国の大使など、引き受けたくないものだ。 ところが昨年末、事態は急変した。冒頭述べたように、尹大統領が「戒厳令」を振り回し、あげく職務停止となってしまった。そして次には、「自分が大統領になったらすぐにも北京を訪問したい」と言う「親中派」の李在明「共に民主党」代表が控えている――。 ということで、暮れも押し詰まった昨年12月27日、新たな中国大使が、ソウル金浦(キンポ)空港に降り立った。戴兵(たい・へい)大使(57歳)である。