フィギュア女子の宮原、坂本は平昌五輪の表彰台に上がれるのか?
全日本はISU(国際スケート連盟)非公認試合のため単純比較はできないが、GPファイナルで優勝したロシアのアリーナ・サギドワ(15)のプログラムコンポーネンツはSP35.06、FS70.42の計105.48点しかなく宮原がリードしている。演技構成点の評価では世界のトップクラスにあるカロリーナ・コストナー(30、イタリア)は、そのGPファイナルでSP37.46、FS74.96、計 113.42点で宮原との差は2点弱だった。 左股関節の疲労骨折の影響で本格的なジャンプ練習ができない間にスピンやステップ、そして表現力を磨いたそうだが、その効果がプログラムコンポーネンツのレベルアップにつながっている。技術点とは違い、この部分の得点は、そのシーズンの実績がジャッジへの印象として大きな影響を与えるとされている。その意味では宮原はすでに五輪前にひとつのアドバンテージを握っているのだ。 宮原は五輪代表決定後に「五輪は今からワクワクしている。どんな舞台か想像できないが、感謝の気持ちを演技に出して精いっぱい頑張りたい。(GPシリーズで戦ってきた)これまでと相手は変わらない。楽しみたい」と語っている。その「楽しみたい」という心理が宮原の場合、本番でさらなるプラスに働くだろう。 一方、樋口新葉(17、日本橋女学館高)との代表争いから抜け出して、一気に注目のヒロインとなった坂本の可能性はどうだろう。前述の中庭氏は今季の成長と進化に目を見張る。 「シニアに転向後、短い期間で驚くほど成長しました。特にGPシリーズ開幕からの約3か月間の成長度は群を抜いていました。全日本では思い切りがよくメンタルの強さが際立ちました。こういう選手は五輪という舞台でも自分の演技が出来ます。持っている力を出せるのではないでしょうか」
坂本はSPではジャンプをすべて基礎点が1、1倍になる後半に入れるなど攻めのプログラムに挑んできた。シニア転向後初となるGPシリーズの初戦、10月のロステレコム杯ではフリーの冒頭の3回転フリップで転倒、3回転ルッツ、後半の3回転ループでもミスを続けて合計得点を200点に乗せることができず(194.00)5位に終わり悔し泣きをした。だが、約1か月後のスケートアメリカではジャンプをパーフェクトに決めて計210.59で2位に入った。大会経験を積むごとに確実にステップアップしてきた。 その坂本の長所はどこなのか。 中庭氏は「男子選手なみの清々しさ、気持ち良さを印象づけるジャンプです」と言う。 「高さ、滞空時間、そしてクリアなランディング。すべてで異彩を放っています。ルッツジャンプの入りに若干課題があり、全日本のフリーでも踏切エッジの軽度のエラーをとられましたが、回転不足も含めて不安のないジャンプなのです。課題は宮原さんと対照的にプログラムコンポーネンツの部分でしょう。ただフリーで使っているフランス映画《アメリ》の世界を表現している、お人形のような動きが、かなり成長して見えます。世界でもかなり高い位置につけていると見ています」 その滞空時間の長いジャンプはライバルのロシア勢と比べても異彩を放っているという。 坂本も、「選ばれたからには責任があります。しっかりと自分の演技をしたいです。ジャンプの安定感を上げていきたい」と五輪に向けて強い覚悟を口にしている。 2人は1月24日から台湾で行われる四大陸選手権を最後の“前哨戦”に位置づけて平昌五輪へ挑むことになる。平昌五輪のフィギュア競技は2月9日に団体戦がスタート。団体戦の女子ショートは2月11日、上位5チームの決勝へ進めば2月12日が決勝で男女フリーがある。注目の女子シングルは2月21日のSP、中1日空けて23日にフリー。その2月23日が女子のメダルを決めるクライマックスとなる。