「ゴアテックス」「パタゴニア」らアウトドア関連各社が製品ケアの取り組み強化 PFAS規制背景に
「はつ油性は持ち合わせていない」
「ゴアテックス」はePEメンブレンへの切り替えによって、PFASフリーと共に製造過程におけるCO2排出量削減も実現(使用する表地・裏地によって異なるが、Higg MSI測定で従来製品より12~42%の削減)。また、ePEメンブレンは従来のメンブレンよりも薄く軽くしなやかという特徴を持ち、「ゴアテックス」特有のゴワゴワした肌触りも軽減される。そのように優れた部分は多いが、1点だけ、「フッ素化合物が分子構造的に持つはつ油性(油をはじく性質)だけは、ePEメンブレンもPFASフリーのはっ水剤も持ち合わせていない」(平井真理子 日本ゴア マーケティングコミュニケーション担当)のだという。
はつ油性が無くても、「ゴアテックス」の防水・透湿・防風性が損なわれることはないが、皮脂などの汚れはつきやすくなる。汚れがつくとはっ水性が低下し生地表面が濡れやすくなり、製品内部に水が侵入していなくても、冷たく湿った感覚が生じやすくなるという。ただし、「ゴアテックス」のはっ水性は、自宅やランドリーでの中性洗剤での洗濯と熱処理(乾燥機またはアイロンなど)というケアで回復させることが可能。「ゴアテックス」製品は「洗ってはいけない」「洗うと防水性が落ちる」と思い込んでいる消費者も多いが、実は洗濯を含む日々のケアこそ重要。「ケアが大切と従来から伝えてきたが、はつ油性のないePEではさらに重要」と平井担当。
正しいケアを行えばはっ水性が回復すると共に、汚れの侵入によるシームテープのはがれや3層構造生地のはがれも防ぐことができ、結果的に製品が長持ちする。長持ちさせて使い続けることで、製品のライフサイクル全体としての環境負荷も下がる。
PFASフリーに向けたこうした「ゴアテックス」の変化を消費者に適切に伝えていくために、日本ゴアは今、これまで以上に啓蒙活動にも力を注いでいる。公式サイトなどでももちろん正しいケア方法については発信しているが、10月末に「パタゴニア(PATAGONIA)」「アークテリクス」「ザ・ノース・フェイス」とブランド横断で、報道関係者に向けた「ゴアテックス」の生地構造やケア方法を伝えるイベントを開催。「なるべく多くのブランドと連携し、業界として正しいケアで製品をなるべく長く使ってもらえるよう、ユーザーにしっかり声を届けていくべき」と、阿部功 日本ゴア アカウントマーケティングスペシャリストは開催意図について話す。アウトドアブランドだけでなく、“はっ水回復コース”というメニューを備えたドラム式洗濯機を販売している、パナソニックも巻き込んでいた点もユニークだ。