今回も誤解だらけ、「国民年金」保険料納付期間5年延長案の本当の狙いとは?実は負担以上に給付されるカラクリ
■厚生年金加入者はすでに60歳以降も払っている この保険料拠出期間の延長は、60歳になった後も国民年金加入者となる人にだけ影響がある。60歳以降も被用者として正規に雇われる形で働く人(厚生年金加入者)にとっては、原則として関係ない。 なぜならば、厚生年金加入者はすでに、60歳を超えて引き続き勤務するならば、70歳になるまで保険料を払い続ける仕組みになっているからである。 だから、60歳以降も被用者として正規に雇われる形で働く人が、この保険料拠出期間の延長の案を、妙に自分事のように考えて、「追加的に保険料を負担させられたら困る」と、被害妄想にかられる必要はない。そもそも、60歳以降も厚生年金加入者は年金保険料が天引きされることになっているのである。
むしろ、「厚生年金加入者は60歳を超えて保険料を払い続けるのに、国民年金加入者は60歳を超えたら保険料を払わなくてよい」という仕組みになっていることを正す意味も、保険料拠出期間の延長には含まれているといってよい。 ただし、この案について、最も気を付けるべきは、前述したように、保険料拠出期間を5年間延長するのに伴い、基礎年金給付に必要な税財源を5年分別途確保しなければならないということである。拠出期間を延長して年金保険料さえ払ってもらえれば、それで完了、というわけではない。
基礎年金給付の財源は2分の1が税財源(国庫負担)であることから、その税財源をどう確保するかまでも含めて、しっかりと制度設計しなければならない。つまり、他の歳出を削減して財源が捻出できない限り、追加的な増税が必要だということである。 まずは、国会議員の数を減らすなど、無駄な支出を削るとか、増税の前にすべきことがあるという意見がある。 無駄な支出は削るのは当然である。しかし、それだけでは焼け石に水である。必要な財源はやがて1兆円強となり、桁が違う。