次戦引き分け以上で決勝T進出決定! なぜ崖っぷちのなでしこJはスコットランドに快勝できたのか?
優勝した前々回大会、準優勝した前回大会を支えた、澤穂希さんや宮間あやさんをはじめとするレジェンドたちはもういない。それでも、女子サッカーが日の目を見なかった黎明期から紡がれてきた歴史と伝統、そして魂が込められたバトンの伝承者として、平均年齢24.17歳と出場国中で2番目に若い顔ぶれになったチームを、追いつめられたいまこそ引っ張らなければならない。 岩渕の胸中に秘められた覚悟はキックオフ直後から、2トップを組む菅澤優衣香(28)=浦和レッズ・レディース=とともにかけ続けた、前線からの絶え間ないプレスとなって具現化された。何度でもしつこく食い下がる姿が、2列目以降で二の矢、三の矢をかける後輩たちの羅針盤となった。 初戦は引いて守るアルゼンチンが作る守備網の周囲でボールを回す時間帯が多く、最後まで相手に怖さと意外性を与えることができなかった。ひるがえってスコットランド戦はプレスをかけ続ける岩渕がスイッチを入れる役目を演じ、マイボールになっても「前へ」の意識を全員が共有できた。 「特に前半はスコットランドにほとんどチャンスを作らせなかった。パーフェクトな試合展開の理由をたどっていくと、プレスが与えた影響に行き着く。あれだけ前へ、前へとなると普通はパスの成功率も落ちてしまうが、セカンドボールを拾う集中力も高かったので波状攻撃を仕掛けることもできた」 前半37分に菅澤が決めたPKも、右サイドバックの清水梨紗(23)=日テレ・ベレーザ=が放り込んだロングボールに反応した菅澤を、相手ディフェンダーがペナルティーエリア内で倒して獲得している。初戦との違いを「前への意識」に帰結させた前出の鈴木氏は、そのうえで岩渕に加えて遠藤、そしてDF市瀬菜々(21)=マイナビベガルタ仙台レディース=を特筆すべき存在としてあげた。 そろって初戦はベンチスタート。岩渕と今大会のメンバーでは最年少となる遠藤は後半途中から出場し、市瀬は最後までピッチに立つことなくスコアレスドローを見届けていた。 「先発を3人入れ替えたなかで、遠藤は相手の最終ラインの裏を絶えず狙い続け、前へ向かうリズムをさらに強めた。初戦で先発した長谷川唯はボールをもってからドリブルやパスを仕掛けるが、遠藤はまずペナルティーエリアの近くにまで走り込む点でタイプが異なる。ゴールに近い位置からシュートを放ち、短い距離のクロスも入れてくる遠藤が入ったことで、相手は日本の攻撃を予測しづらくなった。 市瀬は最後の失点に絡んでしまったことで、トータルの評価は下がってしまうかもしれないが、あの場面を除けば完璧だった。走り込んできた相手フォワードのマークについて抑える、スペースをしっかりカバーする、最後のところで体を張って守る点で、キャプテンの熊谷紗希よりも目立っていた。攻撃面でも冷静なビルドアップと危なげないキープ、前線へのフィードとすべて及第点だった」