次戦引き分け以上で決勝T進出決定! なぜ崖っぷちのなでしこJはスコットランドに快勝できたのか?
岩渕は世界中を感動させた2011年ドイツ大会制覇をスーパーサブとして支えた。市瀬はなでしこジャパンの高倉麻子監督が当時率いていた2014年のFIFA・U-17女子ワールドカップで、そして遠藤は2018年のFIFA・U-20女子ワールドカップでそれぞれ優勝カップを天へ掲げている。 国際サッカー連盟(FIFA)が主催する女子ワールドカップの全カテゴリーを、世界で初めて制したときのメンバーが先発として抜擢。初戦でリズムを狂わせ、プレッシャーにも苦しんだはずのなでしこジャパンを立ち直らせた90分間に、濃密な歴史の積み重ねを感じずにはいられない。 「世界での戦いを経験し、そこで優勝したという自信をもった選手たちが、初戦の引き分けを乗り越えて素晴らしいゲームを演じた。特に若い選手たちに可能性を感じるなかで、いままさにフル代表の舞台で成長している過程のど真ん中にいると言っていい」 鈴木氏も目を細める選手たちは心身ともに上昇気流に乗った状態で、メンタル的に守りに入ったことで押し込まれた最後の15分間をさらなる進化への糧に変えながら、日本時間20日午前4時にキックオフされるイングランド女子代表とのグループリーグ最終戦に臨む。 グループDのもう1試合は、イングランドがアルゼンチンを1-0で撃破。連勝で勝ち点を6に伸ばして首位をキープし、日本が勝ち点2ポイント差で続いている。通算成績で1勝2分け3敗と負け越し、今年3月の国際親善試合でも0-3で完敗している難敵イングランドに勝利すれば1位で、引き分けならば2位で決勝トーナメント進出が決まる。 日本が返り討ちにあい、アルゼンチンがスコットランドに勝った場合は2位を得失点差で争う。ただ、グループAからFまでの3位のうち、上位4チームは決勝トーナメントに進める。勝ち点4を得ている日本は3位で突破できる可能性は高いが、1回戦の相手はおそらく開催国フランス女子代表か、あるいはドイツ女子代表になる。どちらもイバラの道となる。 対照的にグループDを1位で突破した場合は、準決勝まで優勝候補国と当たらない可能性が大きい。上位進出の可能性を左右する、といっても過言ではない大一番を前にして岩渕がチームリーダーとして覚醒。世界と対峙するうえで、理想とする戦い方も得たなでしこジャパンはワールドカップ独特の呪縛からも解き放たれ、各年代で世界を制したポテンシャルを一気に解放しようとしている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)