ドーピング騒動を乗り越え4階級制覇王者の井岡一翔が9.1大田区総合体育館でV3戦…「刺激を受けた東京五輪の熱狂を再現!」
「いろんなスポーツドラマがあった。アスリートとしてメダルを取った競技や選手だけでなく、あと一歩が届かなかった競技や選手を見て刺激を受けた。勝ち負けは、もちろん大事だが、選手の背景、人生像、試合へ向けての過程や戦いに人間味が出る。勝っても負けても、彼らの挑戦を見て伝わるものがあった」 そして井岡は「五輪が閉会して寂しさだったり終わったなあという感覚がある。五輪の余韻が覚めない中で試合をやって盛り上げたい」と、五輪の熱狂を受け継ぐ決意を口にした。 アスリートが、その人生ストーリーを見せる場としては、今回の井岡の世界戦にも共通点がある。ドーピング問題で、警察による捜査まで行われ、「人生終わった」とまで追い込まれた窮地からの復活を示す舞台。しかし、井岡はこう言う。 「いろんな問題があって世間がこの試合の結果が気になるのはわかる。勝たないといけない。でも、その問題(ドーピング騒動)以上に、試合をして、世界チャンプとして勝ち切ることのほうが難しい。だから、そのことと試合はセパレートしている。試合は仕事。ボクシング人生を進んでいかないといけない」 不手際を連発し人生さえ奪われかけたJBCの謝罪を受け入れて“和解”したのも、この試合に向けて、1日も早く気持ちを切り替えたかったからだ。JBCの新たなドーピング検査体制がどうなるのかもまだ発表されていないが、「任せるしかない。いつも通りに正々堂々とやるだけ」という。 挑戦者のロドリゲスは34勝(24KO)4敗1分けの戦績を持つオーソドックススタイルのメキシカン。WBO世界ミニマム級王者時代にIBF世界同級王者の高山勝成(寝屋川石田)を判定で下して2団体統一王者となっているが、それも7年前。田中恒成や比嘉大吾に負けている元世界王者のモイセス・フェンテス(メキシコ)に2015年12月に判定負けして以来、15連勝中で2018年に元WBA世界フライ級王者のエルナン・マルケス(メキシコ)や元日本スーパーフライ級王者の戸部洋平(三迫)を右ストレートで倒すなどの連打とラッシュ力、メキシカン独特のテンポがある。決して油断のできる相手ではないが、ミニマムから上がってきている選手でもあり、スピード、パンチ力を含めた総合力では、ベルト統一を狙う井岡を苦しめるレベルにはない。 「指名試合なので油断はできないが、ボクシングに詳しい人たちが、そう見ているのであれば、チャンピオンとしてのレベルの違い、パフォーマンス力を見せなければならない」 求道者とも言える井岡の志は高い。ドーピング騒動の集中が難しい状況下で、トレーニングは再開しており、すでにスパーリングも行い「今が追い込みのピーク」だという。 一方で不安材料も残る。新型コロナ禍という難敵だ。 「リングに上がるまで大丈夫かな?という不安はある。試合する気持ちでトレーニングをして準備しているのでなんとか実現してほしい」 ロドリゲスは15日に来日予定。スポーツ庁の指導に従い、3日間は完全隔離、その後、ホテルのワンフロアを貸し切りにし、ホテルと練習場との往復以外は、一切、外出禁止の“世界戦バブル”を作り試合に臨む予定。観客も定員の50%に抑えて有観客で行われる。増加傾向にある新型コロナの今後の感染状況などを考えると予断を許さない状況にあるが、試合はTBS系列で生中継されるため最悪の場合、無観客でも開催される方向だ。