バブルに踊った「雪国」の舞台、1室数千万円だった豪華マンションが今や10万円 「東京都湯沢町」とも呼ばれた人気リゾート地の現在
民泊化して収益を狙う動きも出てきた。マンション密集地区にある「エンゼルリゾート湯沢」では、全130室中約50室が民泊として運用されている。家族で訪れたフィリピン人の女性は「観光で5日間滞在する。湯沢は初めてで、スキーを楽しみに来た」と笑顔で語る。 管理会社によると、スキーシーズン以外も「工事関係者が1カ月単位でまとめて借りていく」(担当者)といった需要があり、稼働状況は上々だ。2部屋に投資する会社員の男性(41)は「東京と新幹線で直結し、日帰りで行き来できるという湯沢町のポテンシャルは高い」と言い切る。 エンゼル不動産によると、北海道ニセコ町や長野県白馬村のような海外客中心のリゾート地に発展すると見込み、マンションの購入に関心を示す人もじわじわと増えてきた。湯沢を拠点に30年以上にわたって不動産ビジネスに携わる新保社長は「町には固定資産税もたくさん入った。全体としては(同じ温泉街の)熱海などと比べても遜色のない開発になったと思う。地元への経済的なメリットは大きかった」と言う。
▽バブルの遺物、資産か負債か 林立するリゾートマンションを地元自治体はどう捉えているのか。湯沢町企画観光課の富沢雅文課長は「今あるストック(資産)が有効に活用されるよう手を打っている」と話す。移住・定住の支援やマンション住民の交流を後押しするなどの事業を通じ、町に滞在する人を増やそうとしている。 地元で働く人の生活拠点としてマンションの存在はプラスに働く。首都圏に拠点を置くIT企業4社が湯沢町に進出することが決まり、さらなる移住の促進も期待される。その際に障壁となるのが従業員の住環境だが、既に整っている、というわけだ。富沢課長は「行政としても、リゾートマンションは大きな資産だと認識している」と説明する。 ただマンション対応の最前線にいた元町職員の高橋さんはOBとして町の行く末を案じる。当時若手、中堅職員だった高橋さんらが話し合った「将来に起こり得る危機」のうち、町外からの住民の増加による地域共同体の弱まりや、マンション住民の高齢化といったいくつかの想定が現実になってきたと感じている。
少子高齢化や過疎化といった全国共通の課題に加え、町にはリゾートマンションが抱える負の側面、固定資産税の滞納やマンションでの孤独死といった問題ももたれかかる。 バブルが崩壊した1991年から33年。一時4万円を超えた日経平均株価や都市部の地価高騰、賃金の大幅な引き上げなど、日本が新たな熱狂に向かおうとする中、湯沢町は「バブルの残像」と今も向き合い続けている。