【トランプ関税回りまわって元安にも】トランプ2.0が中国政府・企業・人民に生み出す波紋とは?
企業それぞれへの影響
さて、中国経済は2023年1~9月に実質経済成長率4.8%増を記録した。このまま推移すれば「5%前後」という政府目標はクリアできる。ただし、増加分の内訳は消費が2.4ポイント、投資が1.3ポイント、純輸出が1.1ポイントという構成だ。 米国が大幅に関税を引き上げれば、この輸出がマイナスに転じることも十分に考えられる。25年以降の経済成長には大きな重石が乗っかることになる。 企業レベルで見れば、東南アジアやメキシコに中間財(部品)を輸出し、最終加工をした上で米国に輸出する迂回策を採ることが予想される。ただし、この場合も中国国内の雇用は一定程度失われることになる。景気減速で雇用対策に苦慮している中国経済にとっては打撃だ。 また、関税引き上げは米国のインフレを加速させる。これは米国経済および米国人の家計にとって打撃となるが、インフレ対策としてドル金利が再上昇すればドル高元安に振れるという副産物を生む。 中国は資本規制をしき資金の海外移動を制限しているが、経済が先行き不透明であること、人民元安のトレンドが強いことを背景に資本流出が続いている。米誌ウォールストリートジャーナルの推計によると、23年7月から今年6月までに2540億ドルもの資金が、資本規制をかいくぐって海外流出したとされる。 本来ならば、経済が低迷している中国は大胆な利下げによって景気を刺激したいところだが、資金流出のリスクを考慮してそうした手段を打てずにきた。米国が利上げすれば、中国当局は金融緩和の選択肢をさらに失ってしまう。
企業レベルで見ると、特定の産業分野や企業を狙い撃ちに法案がどこまで成立するのかも注目される。24年はさまざまな中国企業排除法案が米議会に提出された。 産業別企業別の中国企業排除の動きは半導体産業については日本でも大きく報じられているが、それだけではない。中国のバイオテクノロジー企業を排除するバイオセキュア法、ドローン大手DJIを狙い撃ちにしたドローン対策法、外国バッテリー依存脱却法、農業保護法など目白押しだ。 大統領選に加え議会選挙を行われたため、共和民主両党の議員たちは競うように対中強硬姿勢をアピール。そのため中国企業排除の法律が次々と提出され審議されたという背景がある。 選挙が終わった後は法案成立にこれまでのモチベーションは働かないだろうが、すでに審議が進んでいる法案は多く、これらの法案が成立するのか、最終的にどのような内容になるのかが注目される。関税のように米中貿易全体に大きな影響を与えるものではないにせよ、個々の企業にとっては生死にかかわる問題となる。