【トランプ関税回りまわって元安にも】トランプ2.0が中国政府・企業・人民に生み出す波紋とは?
トランプ2.0が世界に衝撃を与えている。2016年からの第1期政権と同様、今回も予想外の行動、政策によって多くの波紋を生み出すことは確実だろう。今や米国にとって最大のライバルとなった中国も例外ではない。 習近平総書記は7日、トランプ次期大統領に祝電を送った。 「歴史が示すとおり、米中が協力すればともに利益を得る、戦えばともに傷つく。安定的で健全で持続的な米中関係こそが両国共同の利益と国際社会の期待に合致している。両国が互いに尊重し、平和的に共存し、ウィンウィンの原則に従うことを希望する。対話を深め、対立点を解決し、共存協力を拡大し、新時代の米中共存の道を歩み出し、両国と世界に幸福をもたらすべきだ」 ありふれた祝電ではあるが、「安定的で健全で持続的」のくだりには、トランプ次期大統領のイメージともっとも遠い言葉だけに思わずにやりとしてしまう。トランプ2.0時代の米中関係については、まさに“先が読めない”がキーワードとなるだろう。
世界のサプライチェーンはいかに
現段階でもっとも注目を集めているトピックは、トランプ次期大統領が選挙戦での公約通り、中国製品の関税を大幅に引き上げるかどうか、だ。第1期トランプ政権でも中国製品に対する関税引き上げは行われたが、今回の引き上げはそれを上回る規模になると示唆されている。 中国にとって米国は年5000億ドル超を輸出する最大の輸出先だ。世界一の経済大国である米国市場を失えば、その代わりはない。東南アジアなど一帯一路沿線国への輸出が増えているとはいえ、その経済規模は米国とは比べようがないからだ。 また、中国に製造拠点を持つ外資企業にとっても、サプライチェーン再編成を急ぐ動機となりそうだ。もっとも、過去数十年にわたり「世界の工場」として製造能力を高め続けてきた中国を外して、新たなサプライチェーンを構築するのは容易なことではない。
その代表例がiPhoneだ。中国・河南省のフォックスコン工場はiPhone製造の中核的拠点だったが、サプライチェーン再編成のために一時は大幅に規模を縮小する計画だった。しかし、今夏になってから再び工員を増員し、製造能力削減は棚上げされた。 インドやベトナムなど別の拠点では米アップルが満足するだけのクオリティとコストを実現できなかったためとみられる。ビジネスと政治の板挟みの中で、外資系企業も中国拠点をどう扱うか、難しい判断が迫られる。