オークションで買える陸自「教範」で捜査? 自衛隊スパイ工作の実態とは
最も“本気”ロシアのスパイ工作
なお、中国で日本側の軍事情報を欲する諜報機関は、主に軍のスパイ組織「総参謀部第2部」と、中国政府の情報部門である「国家安全部」である。どちらも大使館員などとして日本に要員を送り込んでいることは間違いないだろう。 北朝鮮に関しては、少なくとも筆者は、日本の軍事情報をスパイしようとした事件が表面化した例を知らない。かつて80年代によど号ハイジャック犯の日本人妻が、北朝鮮の諜報機関「朝鮮労働党党社会文化部」(現在は内閣第225局)の指令で日本に密かに戻り、横須賀で「夢見波」というカフェバーを経営して防衛大学校の学生をオルグ(勧誘)しようとしていたことがあるが、その程度である。 やはり日本で自衛隊の機密情報を直接狙うようなスパイ活動は、ロシア諜報機関がもっとも本気で取り組んでいるものとみていいだろう (軍事ジャーナリスト・黒井文太郎)
■黒井文太郎(くろい・ぶんたろう) 1963年生まれ。月刊『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長等を経て軍事ジャーナリスト。著書・編書に『イスラム国の正体』(KKベストセラーズ)『イスラムのテロリスト』『日本の情報機関』『北朝鮮に備える軍事学』(いずれも講談社)『アルカイダの全貌』(三修社)『ビンラディン抹殺指令』(洋泉社)等がある