「箸の持ち方・使い方」小学校で 豊田市、和食文化の理解促進も
箸に取り付けたクリップの背に人差し指を載せ、数センチ角のスポンジを挟む。ぎゅっと力を入れて持ち上げると、スポンジに描かれた顔のイラストがつぶれて「変顔」になり、教室は笑いに包まれた。 愛知県豊田市の西保見小学校で25日、給食前の4時限目を食育に当て、1年生24人に「箸の持ち方・使い方」指導が行われた。講師役は栄養教諭の堀田久美さんと担任の小木曽愛理さん。子どもたちを飽きさせない数々の小道具を自作した。児童が持つ箸は、入学時に市から全ての児童・生徒に贈られたものだ。 自動車関連産業が集積する同市は1980年代以降、労働力不足を背景に南米や東南アジアからの移住が進み、外国籍の子どもも増えた。児童・生徒3万5000人のうち外国籍は現在5%。校区内に多くの外国人が住む同小は60%を超えており、日本の子どもたちも「多様な世界」を自然な形で学んでいる。 人口減から外国人材を求める現代日本を先取りしたような街づくりを進めた同市だが、箸の指導は外国籍の子向けというわけではない。給食での和食の充実とは裏腹に、箸を正しく使えない日本の子が増えている。同市も同じで、自身が社会人になって持ち方を修正した堀田さんは「正しく使えれば、姿勢も良くなるし、みんなが気持ちよく食べることができる」と語った。 混ぜる、挟む、つかむ、切る、くるむ。これほど使い方が多彩な食具は世界でも珍しく、涙箸、寄せ箸、刺し箸、迷い箸など禁忌も多い。「箸文化のあるアジアでも、日本の箸は動きが繊細。和食文化の理解にもつながる」。加藤世明・市教委保健給食課長が箸の指導を重視する理由だ。 給食の時間が来た。この日は中華飯、バンバンジー、野菜サラダ、牛乳。24人は「箸で野菜を取り分ける」ミッションを与えられた。児童の伊藤なおみさんは「お皿をピカピカにする」と箸を持ち、ズレン・ジョマラさんも“特訓”を思い出しながら小松菜を上手に挟み上げて「できた!」。
日本農業新聞