J2東京ヴェルディ復活へ、永井秀樹・新監督が発揮している異能な才能
読売クラブとして創設された1969年から、ヴェルディは下部組織を重視してきた。アマチュアの企業スポーツが全盛だった当時の日本サッカー界では異端扱いされたが、プロ化の波の到来とともに下部組織は時代を先取りした存在となり、クラブにとっての黄金郷となった。 そうした経緯を熟知しているからこそ、永井監督は就任早々に新機軸を打ち出す。DF近藤直也(35)が返上したことに伴い、空位となったキャプテンにユースから昇格して3年目で、森保ジャパンが臨んだ6月のコパ・アメリカ代表にも選出されたMF渡辺皓太(20)を指名する。 渡辺は中盤の一角で、永井体制下で4試合続けて先発フル出場を果たす。その間にチームも2勝1分け1敗の結果を残した矢先に、渡辺は横浜F・マリノスからオファーを受けて今月8日に電撃移籍する。想定外の事態を受けて、永井監督は鹿児島戦の直前に藤本を新キャプテンに指名した。 さらに近藤、DF平智広(29)、DF李栄直(28)、MF佐藤優平(28)で構成されていた副キャプテンに、渡辺や藤本と同じくユース出身のMF井上潮音(22)を加えた。下部組織出身の選手をチームの精神的な軸にすえる手法を、永井監督は「新しいヴェルディを作るため」と説明する。 「そのためには、針を(若手に)振らなきゃいけない。ただ、若い選手だけで勝てるほどJ2は甘くないことを自分自身が一番よくわかっているので、新しいキャプテンと副キャプテンを決める前に、若い力が出てこなければ未来へは向かっていけない、という話もしました。チームが安定して勝っていくためにはベテランや経験のある選手の力も必要なので、そこはうまく融合させていきたい」 戦術面では3バックと4バックを併用しながら、前線は必ず3トップを組んできた。そして、3トップの左右は「ウイング」ではなく、明確な意図を込めて「ワイドストライカー」と命名した。 「この名前をつけている限り、常に裏を取る動きをするとか、ゴールを狙える位置に入っていかなきゃいけない、ということです」