谷垣氏が新幹事長に「自民党三役」とはどんな役職? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
■政務調査会長
政務調査会長は「党」の政策担当者。幹事長が党の政局に大きな影響力があるのに対し、こちらは政策です。議員立法はもちろん、内閣提出立法も、まず与党でもむのが通例ですから企画立案の中心といえましょう。国会に置かれた17の常任委員会のうち政策に関する12の委員会とほぼ同名の「部会」が置かれています。会長は運営を統括します。国会の常任委員会は政府の「省」とほぼ一致するので、部会長は自民党内の「大臣」で会長は官房長官の位置にあるといった感じでしょうか。 自民党議員は国会の委員会とほぼ同じ部会に属するケースが目立ちます。そこで専門知識や駆け引きも学び「族」となっていきます。会長は幹事長ほどでないにせよマスコミなどへ党の政策を語る機会も多く、政策通とみなされ、露出は多い方です。
■総務会長
総務会長は総務会メンバー25人から選ばれる建前になっていますが、実際は総裁が決めています。形式的にはすごい権力があり、幹事長さえ総務会の承認が必要。党則には「党の運営及び国会活動に関する重要事項を審議決定する」とあり、党決定に関わるほぼすべてを審査するのです。政務調査会の決定もここを通らないと党の方針になりません。決まったら決まったで今度は党議拘束がかかります。個人的に反対でも自民党国会議員である以上したがわなければなりません。政府が国会に提出する法案や閣議決定も事前に審査しています。 総務は党内各派閥から均一に選ばれるので首相(総裁)や党主流派の意見にガンとしてしたがわない「うるさ型」が必ずいるのも特徴です。党則では「総務会の議事は、出席者の過半数で決し」とあるものの、全会一致を慣例としています。党内の意見を広く吸収する作用と、ゆえに決定が遅くなる副作用が常に議論となってきました。「なんちゃって全会一致」というパターンも時折みられます。 集団的自衛権行使容認の閣議決定前の総務会で、村上誠一郎総務が反対論を述べたものの野田聖子総務会長が「賛成が圧倒的多数だから総務会長の判断として了承したい」とし、その「了承」に反対がなかったので全会一致とみなしたと発言しています。総務会をよくとらえる側は「党内民主主義が働く」で、批判的な立場だと「単なるガス抜き」と形がい化を指摘します。 何しろ「うるさ型」を抱えて「なんちゃって」であろうがなかろうが無理やりでも全会一致の体裁を取らなければならないので寝技立ち技何でも来いという調整上手の百戦錬磨が起用されるケースが多く、三役とはいえ露出は極めて少ない。代表的な存在が60年代末から80年にかけて3度総務会長となった鈴木善幸氏で大平正芳首相の急死の後に首相となった際、「ゼンコー フー」などと海外から知名度のなさをからかわれたことがありました。それほど目立たない役職なのです。
--------------------------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】(http://www.wasedajuku.com/)