神戸市長「タワマンは将来の廃棄物」…市内JR駅前のタワマンを買う、年収920万円の40歳・気ままなおひとりさまに待ち受ける「絶望的未来」【FPが解説】
人気衰えぬタワーマンション。需要が高いにもかかわらず、神戸市の中心部では、あえて新たな建設を規制する条例が可決されました。「廃棄物を作るに等しい」という神戸市長・久本喜造氏の強い言葉が話題を呼んでいます。本記事ではSさんの事例とともに、タワーマンションの未来について、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
100年後のタワーマンション
いまなにかと話題のタワーマンションですが、50年後、100年後の姿を想像したことがあるでしょうか。 タワーマンションとは一般的に、「地上20階以上、高さ60m以上」の高層マンションの通称です。東京カンテイによる2024年1月のプレスリリースによると、タワーマンションは全国で1,515棟存在するとされています。このうち最も多いのは東京都の479棟、次に大阪府の273棟、神奈川県の144棟という順番で、大都市圏に集中していることがわかります。 大都市圏のタワーマンションは立地のよさが最大の特徴です。眺望がよく駅に極めて近い都心の立地に建てられているのは多くの人がご存じのとおりかと思います。東京都心であれば価格は軽く1億円を超え、2億円、3億円に迫る物件もめずらしくはありません。 そんな多くの人の羨望と嫉妬を集めるタワーマンションですが、50年後、100年後にも資産価値を保ち、定期的な大規模修繕が支障なく行われる……。それが理想であっても、現実は少し厳しいかもしれません。
いずれやって来る、解体のとき
タワーマンションも建築物である以上、いずれ解体されるときがやってきます。タワーマンションの「寿命」はどのくらいでしょうか。国土交通省「中古住宅流通促進・活用に関する研究会報告書」によると、RC造(鉄筋コンクリート造)の建物の物理的寿命は117年と推定されています。適切な修繕計画が実行されていれば、100年程度の寿命を確保できるはずです。 しかし100年といえばわずか3世代分の期間でしかありません。100年後に残されたタワーマンションの解体は誰が行うのでしょうか。現在の法律では区分所有者が費用を負担するものとされています。タワーマンションではない板状型マンションであれば、解体費用は一戸あたり500万円程度とされています。一方でタワーマンションは超高層建築物であるため、費用がかさむのは容易に想像できます。もし、板状型マンションの倍の費用がかかるとしたら、一戸(一世帯)あたり1,000万円の費用を準備しなければならないということになります。 木造の戸建て住宅であれば、解体費は坪当たり5万円~7万円程度が目安です。延べ床面積30坪の建物であれば、解体費は150万円~210万円ということになります。このほかにも地中杭の撤去費用も掛かるため、総額250万円~310万円程度となるでしょう。もちろん高額であることには違いありませんが、個人で負担するには現実的な金額に思えます。 これに対して、タワーマンションの場合は比較にならないほどの費用負担を迫られるということになります。いま新築のタワーマンションを購入する人達ではなく、孫の世代に先送りしてしまう負担なのです。タワーマンションを購入する人は、通常のマンションや戸建て住宅よりもより緻密な「出口戦略」を立案しておく必要があります。 日本で最も古いタワーマンションは、東京都港区にある1971年竣工の物件です。ビンテージマンションともいわれ、築後50年を超えていますが、健全な管理によっていまも瀟洒(しょうしゃ)な佇まいと、驚くほど高額な価格を維持できています。もちろん抜群の立地のよさも理由としてあります。東京都の現在も続く人口増加も関係しているでしょう。 タワーマンションに限らず、マンションが建物の寿命を長く伸ばし、資産価値を維持するためには、管理体制の健全さが欠かせません。健全な管理組合の運営によって区分所有者の合意形成がスムーズになり、適切な修繕計画が実行されるのです。マンションの管理体制は、十分な修繕積立金が確保できているかにかかっています。修繕積立金が不足してしまえば、とたんに管理組合は機能不全に陥り、区分所有者の合意を取り付けようとしても上手くいくことはありません。 建物の老朽化とともに資産価値が下がり、それに伴って売却を進める所有者が増加したらどうなるでしょうか。かつての輝いていたマンションは一気に限界集落と化し、「廃棄物」へと変貌していくことも決して大げさとは言い切れません。そしてタワーマンションだけではなく、それらが多く集まる街も壊れていく……。 そこに強い危機感を持っている自治体があります。神戸市です。