マクロン氏の解散戦略は裏目に?戦後のフランスで初めて「極右首相」誕生も
フランス国民議会(下院)選挙に向けた各政党による選挙戦が17日、正式に始まった。足元の情勢では極右の国民連合(RN)が左派連合を抑えて第1党に躍進し、マクロン大統領が率いる与党勢力は3番目の勢力にとどまる見通しだ。専門家は、解散総選挙に打って出たマクロン氏の戦略は裏目に出る可能性があると指摘する。 マクロン大統領が議会の解散を発表したことを受けて、フランス政界は本格的な選挙モードに突入した。投票開始は6月30日。わずか数週間の準備期間しか与えず、他党の不意を突こうという作戦だ。マクロン政権は欧州議会選挙で与党が、マリーヌ・ルペン氏率いる極右のRNに大敗したことを受けて、解散総選挙を行うという賭けに出た。だが事はマクロン氏の思惑通りに進むのだろうか? <フランス議会選の仕組み> 国民議会(下院)1議席につき1選挙区、計577選挙区で争われる。選挙区内で絶対多数の票を得た候補者が第1回投票で選出される。しかし多くの場合、決選投票が行われる。決選投票に進むには、第1回投票で少なくとも12.5%の票を得る必要がある。そして最も多くの票を得た人が勝者となる。 <誰が政府を運営するのか> 大統領は通常、最多議席を有する政党から首相を指名する。世論調査によるとフランスの戦後史上初めて、極右が勝利する可能性が示されている。パリ政治学院政治科学センターのアンヌ・ミュクセル所長は、マクロン氏の解散総選挙は裏目に出る可能性があると指摘する。 「これは危険な賭けだ。なぜなら極右勢力が初めて政府に登場する可能性を開くからだ。また、共和国大統領と政府の間で『コアビタシオン(保革共存)』が生じる可能性がある」 絶対多数を得るには少なくとも289議席が必要だ。RNは絶対多数に至らず最多議席を獲得した場合、少数派政権を樹立する可能性がある。だが28歳のRN党首ジョルダン・バルデラ氏は、絶対多数を獲得しなければ改革は実行できないと述べている。 <今後予想されるシナリオ> 政府が大統領と異なる政治的立場をとる「コアビタシオン」は、フランス史上3回起きた。政府は国内において大部分の権力を持っているが、大統領は軍の最高指揮官であり、外交でも影響力を持つ。 しかし、外交政策における権限の分担は明確ではなく、それがウクライナ戦争やEU政策に対するフランスの立場に影響を与える可能性がある。 マクロン氏は少なくとも1年間は新たな議会と向き合わなければならないだろうが、その後再び総選挙を行うことは可能だ。 マクロン氏は22年4月の選挙で2期目を勝ち取っており、3年間は大統領の座にあり続ける。議会も政府もその前にマクロン氏を大統領の座から追うことはできない。