強みは電動トロリー式…日立建機が超大型ダンプトラックで攻める、鉱山向け拡大
日立建機は超大型ダンプトラックと南米市場を深耕し、鉱山機械事業を拡大する。鉱山機械事業の売上高で2030年度に、24年度見込み約5割増の6000億円を目指す。鉱山用油圧ショベルの世界シェアはすでに約30%だが、今後の成長余地が大きい市場として同12%のダンプトラックに着目。北米に比べて遅れている南米の販売サービス体制も強化し、事業展開を加速する。 (編集委員・嶋田歩) 【写真】日立建機のフル電動ダンプトラック 「大型クラスは開発が難しく、ここ(大型クラス)で戦略を立てる」。24日に開いた鉱山機械事業説明会で、先崎正文社長は大型ダンプトラック事業の拡大に意欲を示した。 日立建機が鉱山機械のうち、ダンプトラックに照準を合わせるのは油圧ショベルより稼働台数が多く、拡大余地が大きいためだ。中でも超大型ダンプトラックは安定的に売り上げが見込める。小型では中国勢の低価格攻勢があり、技術開発の難易度が高い超大型で戦略を講じることで、自社の優位性を維持・向上させる方針だ。 その一つが鉱山現場での脱炭素対応だ。同社は超大型ダンプトラックで、世界に先駆けて鉱山現場でのフル電動車両の実証試験を6月にザンビアの銅鉱山で開始した。架線(トロリー)から給電する方式で、積載量は200トン。ディーゼルエンジン式と比べて二酸化炭素(CO2)排出量を同3000トン減らせるなどの効果がある。 また電動ダンプの中でもトロリー式は走行中でも充電が可能。そのため、充電のたびに停車が必要な充電ステーション式と異なり、稼働率を維持できるほか、車体重量を抑えて積載量を増やせる強みがある。トロリー設備には高額の敷設費用がかかる壁があるが、先崎社長は「鉱山大手では環境に非対応なため操業を止められるケースも出ている。環境対応は世界必須であり、コスト的にもペイできる時期が早晩来る」と意に介さない。 鉱山ダンプの有望成長地域は、豊富な鉱山を有する中南米だ。そこで同社はブラジルに25年1月までに販売・サービス会社を設立するほか、丸紅と共同で南米の販売・サービス体制を再構築する予定。修理再生工場や部品倉庫体制も整備する。北米と合わせた米州鉱山機械事業の売上高を24年度見込み比約2・1倍の2000億円に伸ばす計画だ。 中南米市場の売り上げ規模は、コマツが生産、販売体制で先行の強みを持ち、同社の24年4―6月期の同市場の売上高は前年同期比12・8%増の1657億円だった。ダンプトラックも電動以外に、さまざまな動力源で動くパワーアグノスティック型や水素燃料電池駆動型を開発中だ。 日立建機にとっては、米キャタピラーも含めた競合他社との差別化も、中南米市場攻略のカギとなる。