大江千里、愛車歴の続きを語る! ゴルフⅡと共に所有した意外な1台とは
愛車を見せてもらえば、その人の人生が見えてくる。気になる人のクルマに隠されたエピソードをたずねるシリーズ第56回。後編では、アーティストの大江千里さんが、サーブに乗っていた頃の思い出や、ドライブのエピソード、憧れのクルマなどについて語る。 【写真を見る】大江千里が所有したクルマなど(10枚)
ロスまで往復9000kmのドライブ
大江千里さんは2008年にジャズピアニストを志し、米・ニューヨークに移住した。そのさい大好きだった愛車、フォルクスワーゲン「ゴルフⅡ」を手放し、以来クルマを所有しない生活を送っている。 「ニューヨークでは駐車場が高いから、同じアパートメントでクルマを持っている人は、路上駐車が多いですね。モデルの女の子が、朝になると駐禁を切られないようクルマを見に行って、ちょっと動かしているのを見て『わー、大変そうだなぁ』なんて。でも日本に帰ったときに、ちゃんと免許は更新しています。だからゴールド免許です(笑)」 アメリカで運転することはほとんどないというが、かの地に渡り、音楽学校の学生になった年の夏休み、ニューヨークからロサンゼルスまでレンタカーで旅したという。 「『ウェザー・リポート』のドラマー、ピーター・アースキンの授業を受けるために、ロスに行って、1カ月滞在してきたんです。クルマでニューヨークからロスまでは2800マイル(約4500km)。愛犬を横に乗せて、ひとりで運転し続けて6泊7日ぐらいかかったかな。往復9000km、食事は朝昼晩とビッグマックとコーラのラージで、愛犬と一緒にでっかい夕焼けを見たことが忘れられないな」
憧れのビートルとの思い出
今回、撮影用に用意したのはフォルクスワーゲン「タイプⅠ」。言わずとしれたあの“ビートル”だ。フェルディナント・ポルシェの設計によりドイツの国民車として生まれ、半世紀以上にわたり生産された世界で最も有名な大衆車。大江さんは学生時代からビートルに憧れていたという。 「愛らしいデザイン、バタバタバタ……という排気音が大好きで、何度も“欲しい”と思ったけど、結局乗ることはなかったですね。哲っちゃん(小室哲哉さん)に勧められて買ったゴルフを愛してしまったこともあるけど、ビートルは今も憧れのままです」 「メキシコのメリダという町に行ったとき、そこかしこにビートルが走っていて、楽しかったなぁ」と、ビートルを愛おしそうに見つめながら話す大江さん。今回のビートルは1960年代後半に製造されたモデル。薄いブルーの外装、シンプルな内装、整備の行き届いたエンジンルームなど、ひと目でとても大切に乗られているのがわかる。 「2枚目のアルバム『Pleasure』(84年)を出したときのマネージャーが“ビートル・マニア”で、神戸ナンバーのきれいなブルーのビートルに乗っていましたね。3枚目のアルバム『未成年』(85年)のジャケット撮影では、カメラマンの大川直人さんが現場に白いビートルでやって来て、それに乗り込んで撮影したのも忘れられないなぁ」 スタイリストが用意したヴィンテージのアロハシャツとチェックのパンツを纏った大江さんは、まさにアルバムジャケットの撮影のように、ビートルの前でくるくると表情を変え、両手を広げてポーズを決める。 83年にデビューした大江さんは、前編で書いたように、86年に初めての愛車、フォルクスワーゲン・ゴルフⅡを手に入れる。 その後、87年に武道館ライブを成功させ、88年には夏の恒例となる野外ライブ『納涼 千里天国』を開催、90年には9枚目のアルバム『APOLLO』が自身初のアルバムチャート1位に。ビッグアーティストの階段を一気に駆け上がっていった大江さんが、もう一台の愛車、サーブ「900」を買ったのはそんな頃だ。