The ChatGPT logo on a laptop computer.

（ブルームバーグ）： ヘッジファンド運営会社バリアズニー・アセット・マネジメントのチーフエコノミスト、クリス・プルマン氏は以前、中央銀行政策決定会合を前にしたリポートの作成に２日をかけていた。その作業に費やす時間は今や、わずか30分に短縮した。

パワーアップした新世代の生成人工知能（ＡＩ）のおかげだ。時間のかかる調査作業はＡＩチャットボットが代行してくれる。ウォール街のエコノミストの見方をまとめたり、チャートを作成したり、金融当局の最新の発表を引き出したりもしてくれる。プルマン氏が文章を入力すると、ＡＩプログラムはあらゆる市場の知恵をテンプレートに組み込み、金利見通しを示す。

「当初考えられていたより、ＡＩチャットボットが実際にかなり強力であることが分かった」と同氏は評価する。「ただ、箱から出してすぐに使えるわけではない」とも注意を促した。

オープンＡＩが対話型ＡＩ「ChatGPT」を大々的に発表してから20カ月余りが過ぎ、ツーシグマ・インベストメンツやマン・グループなどのヘッジファンド運営会社は、日々のリサーチや投資プロセスにチャットボットを組み込むことで優位に立とうと争っている。大手銀行も生成ＡＩの活用に乗り出している。ＪＰモルガン・チェースが行内向けに独自ＡＩツールの提供を開始したほか、ゴールドマン・サックス・グループも独自プラットフォームを構築している。

ＪＰモルガンが独自の生成ＡＩ、「調査アナリスト」として行内で提供

投資での優位性を確保するために新技術を積極的に試すこうした企業、いわゆるアーリーアダプターにとって、規制関連の書類に目を通したり、調査内容をまとめたり、基本的なコードを書いたりしてくれる生成ＡＩはありがたい存在だ。こうした作業はこれまでインターンが主に担っていた。

しかし、機転の利いた投資アイデアや信頼できる予測を出すなど、ＡＩチャットボットが本格的なアナリストとしての仕事をこなすことは可能なのだろうか。ＡＩブームによる今年の株高を正当化するのにウォール街が苦労しているのと同じように、そこに至るまでの道のりは長そうだ。