「お食事時間」を少しでも長く 冷凍食品の「温め」と電子レンジ問題
新卒で入社した出版社で、書籍の編集者一筋25年。12万部のベストセラーとなった『87歳、古い団地で愉しむ ひとりの暮らし』(多良美智子)などを手がけた編集者が、40代半ばを目前にして、副業として訪問介護のヘルパーを始めました。今回は、ヘルパーとして食事の用意をする際に、課題となる「時間」についてです。 【本編】画像を見る 「こちらも便利な時短家電」
限られたサービス時間内に、どうやって食事時間を確保するか
サービス内容に「食事の用意」があるとき、いつも課題になるのが、「ご本人が食事される時間の確保」です。 多くの場合、高齢者の方は食べるのに時間がかかります。もし、お食事を提供するまでがヘルパーの仕事で、お食事途中でも終了時間がきたら「あとはどうぞごゆっくり」と言って退室できるなら、いくらでも時間をかけて食べていただいていいでしょう。 しかし、たいていは「食べ終えた」ところまで見届けるのがヘルパーの仕事です。食後に服薬、歯磨きをすることも多いです。座った時の姿勢や歩行が不安定な方の場合、食卓からベッドに戻り、横になるのを見届けてから退室、というケースは少なくありません。 つまり、サービス時間内に食べ終わっていただかなくてはいけないわけです。本当はゆっくり召し上がってもらいたいのですが、時間に「縛り」のある訪問介護、なかなか難しいのが現実です。
冷凍食品は便利だが、「温め時間」に注意が必要
少しでも食事時間が長くとれるよう、食事の用意は手早く終えたいもの。そのための工夫として、前回の記事でもふれたように、手軽な冷凍食品の活用があります。 ただ、冷凍食品は「解凍(温め)」という時間がかかります。おまけに、温めた後、とても熱くなるので、それを冷ます時間が必要です。お年寄りは熱いものが苦手な方が多いのです。なので、同じ冷凍食品でも、温めに時間がかかる食品は避けたいところです。 あるお宅では、近居のご家族が食事の買い出しを行っており、一時期、冷凍お好み焼きを常備されていました。たしかに、お好み焼きは野菜も肉も炭水化物も一度にとれる優れものです。やわらかくて、高齢の方にも食べやすそうです。 しかし、常備されていたのは、温めに6分以上かかるものでした。そのお宅では、1時間のサービスのうち、排泄(はいせつ)介助や更衣の身体介護もあり、食後には服薬確認・口腔(こうくう)ケアももちろんありましたから、食事にかけられる時間は20分くらいでした。そのなかで、温めに6分は長い…。冷ます時間を入れたら、10分近くかかります。そうなると、お召し上がりの時間は10分ほど。いかにも慌ただしく、またこの方の食事スピードでは食べきれないでしょう。 ご家族は冷凍庫にたくさんストックの冷凍お好み焼きを用意してくださいましたが、結局手つかずとなり、早々にレパートリーから消えていったのでした。 便利だけれど、意外に「落とし穴」があるのが冷凍食品なのです。