「また人生を楽しめるように」 ウクライナ…親を亡くした子どもの心癒やす“リハビリキャンプ”
■親愛なる日本の人々へ 取材したウクライナ人コーディネーターの思い
最後に、今回の現地取材を担当したNNNの現地コーディネーターであるビタリー・ジガルコ氏が寄せてくれたメッセージを紹介する。取材者として、1人のウクライナ人として率直な思いをつづった彼のメッセージが一人でも多くの人の心に届くことを強く願う。
【ビタリー・ジガルコ氏のメッセージ】 私たちがGen.Campを訪れたのは日差しの降り注ぐ暖かな夏の日でした。そこではロシアがウクライナの土地で始めた戦争のため、親を失った子どもたちが参加していました。 戦争のために、子どもたちは片方の親を失うか、両親を失って孤児となりました。ロシアは子どもたちにとって最も大切な存在である家族や親を殺したのです。 子どもたちに、親の死について話を聞くことは私にとって本当に困難なことでした。 私の心を強く動かしたのはアナスタシアの答えです。 彼女の父親は戦争で死に、遺体が運ばれ、葬儀が行われることになりました。アナスタシアの母は彼女に家で待っていたほうがよいと言いましたが、アナスタシアは父の葬儀に参加すると言って譲らなかったのです。 私が「なぜ葬儀に行くと言ってきかなかったのですか?怖くはなかったのですか?」と聞くと、彼女は答えました。「ママを1人にしたくなかった」と。 この答えを聞き、私は涙がこみ上げ、言葉に詰まりました。 残念ながら、戦争は子どもたちを猛烈な速さで大人にしてしまいます。残念ながら、戦争は彼らの「子ども時代」を奪い、魂と精神にトラウマを植え付けるのです。 ウクライナはロシアの侵略に2年半以上、抵抗し続けています。ウクライナ人は自らの土地で自由に、独立して生きることを求めていますが、そのためにウクライナ人が払っている代償はとても大きいのです。 多くの子どもたちが父や母を抱きしめることができなくなり、そして残念ながら、多くの親たちが子どもを抱きしめられなくなりました。こうした人々はこれからも増え続けるでしょう。 私は日本の人々に強く願いたい。この記事を読み、動画を見て、戦争が1日ごとにウクライナの子どもたちを孤児にし、親たちが最も大切にする存在である我が子を奪っていくという事実を知ってほしいのです。これは言葉で説明したり表現したりすることのできない痛みです。 親愛なる日本の人々へ、平和を愛し、家族と過ごす時間を愛してください。これらは皆さんにとってしばしば当たり前のことに思えるかもしれません。しかし我々ウクライナ人にとっては、これこそが何よりも心から願う夢なのです。 (※年齢は全て2024年6月の取材時)