「また人生を楽しめるように」 ウクライナ…親を亡くした子どもの心癒やす“リハビリキャンプ”
ロシアによるウクライナ侵攻は開始から2年半が経過し、民間人の死者は国連機関が確認しただけで1万1520人(2024年8月発表)、ウクライナ軍の戦死者は今年2月にゼレンスキー大統領が3万1000人にのぼると発言している。こうした中で、親を失った子どもの心のケアを行うキャンプ「Gen.Camp」が民間団体により継続的に開催されている。21日間の期間中、カウンセリングや様々な遊びを通して心の傷を癒やし、「子供らしさ」を取り戻すことを目指している。 【映像はこちら】親を失った子どもたち「角を曲がったら戦車が…」「何かを思い出すたびに…」 ウクライナ 心の“リハビリキャンプ” 今年6月、NNNはウクライナ西部で行われたキャンプを取材した。なお、子どもたちへのインタビューにはキャンプの心理学者が立ち会った。(国際部・坂井英人)
■受け入れられない突然の死別 語りを通じ“現実に気付く”
今回のキャンプに参加したのは6歳~16歳の子ども50人で、これまでにのべ450人が参加した。ウクライナの企業などから出資を受けていて、参加費は無料だ。 キャンプの心理学者によると、あまりにも突然の死別を現実として受け入れられず「親の死を悲しむこと」ができない子どもが多いという。そうした子どもたちは、個人やグループでのカウンセリングを受け、他の子の体験を聞いたり、自身について語ったりすることを繰り返す中で、徐々に親の死という現実に「気付いて」いくというのだ。 心理学者・ワヌイ氏 「(親の死という)現実を理解したとき、難しい感情に直面します。深い悲しみや怒りが入りまじり、誰とも話したくないと思う子もいます」 「この感情がやがて薄れると、癒やしのステージが始まります」 段階を経て、親の死を自らの歴史の一部として受け入れていく。こうして気持ちを整理することで、子どもらしく遊びを楽しんだり、将来の夢を描くことが可能になるという。
■父を語る笑顔は「精神の防衛的なメカニズム」
アンドリーさん(12)は軍事侵攻が始まった直後の2022年3月、チェルニヒウ州内を両親・おじとともに避難している最中にロシア軍の車列に遭遇した。 突っ込んできたロシア軍戦車がアンドリーさんたちの乗る車を押し潰して破壊し、去り際に燃料タンクに発砲して火をつけた。直前に車から出されたアンドリーさんだけが生き残った。今回が2回目の参加で、感情的にマヒした当初の状態から回復し、現在は両親のことを「いい思い出」と振り返ることができるようになった。