地域を巻き込む仕組み「世界に発信」 湘南アイパーク運営会社 藤本社長インタビュー 神奈川発 医療革命(下)
「欧米では、まずは大学が中心にいる。マサチューセッツ工科大(MIT)やハーバード大など、強力な知財をもった大学があり、起業家精神を持った研究者たちが何十年も産学連携を繰り返してベンチャーをつくる。そこに投資する投資家が増えて、最終的に、製薬企業が育ったベンチャーを吸収する。それが(両大近郊の)ボストンのエコシステムの方程式だ。湘南アイパークのエコシステムの中心にはいるのは、製薬企業。世界的な製薬企業が複数ある国は米国と日本、スイスぐらい。そこでアイパークではボストンの方程式とは逆に、まずは産業界主体の集積を作り、拠点の魅力が増した後に大学やベンチャーとのつながりを作ろうとしてきた。順序は違っても、エコシステムの完成型は同様になる」
--神奈川での挑戦の意義は
「再生医療、未病(健康と病気の間の状態)、認知症、希少疾患という4つを戦略領域と位置付けている。最初の2つは県からいただいたアイデア。再生医療は殿町(川崎市)に企業も大学もある。未病については、この地域(湘南アイパーク付近)の住民の協力によってイノベーションが育ち、そして住民が健康になり、未病を改善することができるようになる。こうしたサイクルを地域で進めることが重要になる」
--地域との連携は
「現在の協議会とは異なる形だが、これまで県、藤沢市、鎌倉市と湘南鎌倉総合病院、湘南アイパークの5者で連携し議論をしてきた。住民のご理解をいただければという条件付きになるものの、健康に関するデータの活用を地域でやろうとしている。必要な時に救急車が自動運転車で自宅にまで来るという未来も可能だろう。この地で生まれた仕組みが世界に広がってほしいと取り組んでいる」
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藤本利夫(ふじもと・としお) 東京都出身。中学、高校は聖光学院(横浜市)に通う。京都大学医学部卒業後、京都大学の関連病院勤務を経て、ドイツ、米国の病院で外科医として勤務。その後、日本イーライリリーで研究開発を担当。武田薬品の湘南ヘルスイノベーションパークのジェネラルマネジャーを経て、現在、湘南アイパークを運営するアイパークインスティチュート社長を務める。56歳。