ユニクロ、柳井チルドレンが支える欧州の躍進 25歳で旗艦店店長に
鬼門は中国、「1兆円」持ち越し
死角があるとすれば、中国事業だ。24年8月期は中華圏(中国、香港、台湾)の売上高は前期比9%増の6770億円と、海外の地域別成長率で最も低かった。店舗数は1032と群を抜くが、22年8月期の達成を目指していた売上高1兆円は、なお遠い。 中国事業を統括する潘寧グループ上席執行役員は「中国の消費マインドが変わり、コスパ消費が若者で顕著になっている」と話す。入居するショッピングモールの不振などもあり、集客が伸び悩む店舗が相次いだ。ゴールドマン・サックス証券の河野祥投資調査部長も「ユニクロは中国で中~高価格帯の受け皿となっており、市況の影響を受けている」と指摘する。 打開策として潘氏は、欧州のように個店経営に切り替え、電子商取引(EC)を拡大することで、28年8月期の売上高1兆円に挑む考えだ。「(中華圏は)売上高3兆円を見込める市場。将来的に3000店の店舗網を構築する」と話す。 中国は構造改革のとき、量を追う戦略に反省点 ファーストリテイリング最高財務責任者(CFO)・岡﨑健氏に聞く ライフウエア(究極の普段着)のコンセプトを商品構成や売り場で体現した結果、お客様からの支持が広がっている。好機なので攻めなければいけない。人材の採用・育成やデジタル、店舗、物流網に重点的に投資する。 地域別では、欧州と米国が急速に伸びている。SNSなどの口コミを通じて顧客層が広がり、リピートにより顧客基盤も積み上がっている。欧米で成功するとグローバルにブランド力が高まる。欧米発の情報がアジアなど他の地域に伝わり、好循環が起きている。 日本も好調だ。当社の商売はいかに需要を予測して適正な在庫を持ち、需要に訴求する売り場をつくっていくかだ。在庫の持ち方などの対応力が高まり、商売の精度が上がっている。 中国ではこれまで、年80~100店舗のペースで出店し、出店数がけん引する形で成長してきた面があった。量を追うがゆえに、ある種の妥協で出店してしまった部分があるのではないか、といった反省点が多々ある。 中国では規模の拡大を優先してきたが、今後は(市場を)深掘りすることが大切になる。出店数にこだわるのではなく、スクラップ・アンド・ビルドし、店舗ネットワークの質を改善させる。 中国の1店舗当たりの売り上げは日本の半分程度だ。長期的には日本と同水準まで高めたい。中国では、地域の実情に合わせた個店経営の推進が道半ばという局面だ。売り場などのレベルを高める取り組みをここ数年できっちりとやり、そこから出店のアクセルを踏みたい。今は構造改革するいいタイミングだ。根本のところは、そこまで心配していない。 地域別ごとに粗利率や経費率に差があるが、売上高営業利益率は15~20%の範囲で収まっている。利益率を25%まで高めるよりは商品価格を抑えて顧客基盤を広げることが成長につながると考えている。(談)
酒井 大輔、梅国 典