鯖江で「小さな産業革命」、インタウンデザイナー新山直広に聞く地場産業の継続と価値創出に必要なこと
沢正眼鏡は家族経営6人の小さな会社で平均年齢が約60歳だったが、息子が4月に社長になり、新たにスタッフを雇用しようと労務環境の改善を目指している。例えば「技術は目で盗むもの」というのが通例だったが、マニュアルを作りDX化を促進している。面白いのは、空き家対策事業を始め、会社のまわりの空き家を買い取って改装し、若い人向けのシェアハウスにしていること。“働く×暮らす”の環境作りをすることで担い手を作ろうとしている。
マーベルは給与水準を上げることを目指して給与体系を作り、給与を高くしたことで若い人が入社した。社風もイケイケになっていて、眼鏡業界では新しい風になっている。
WWD:新山さん自身がこれから取り組む課題は?
新山:廃棄物と労務だ。眼鏡は単一素材ではないし、例えば「土に還るやさしい素材」とうたっている素材はあるが、資源環境についてしっかり取り組まないと産業自体が危うくなる。本当に土壌分解するのか。眼鏡は単一素材ではない。具体的なアクションは難しく、儲からないと止まる。産地の意識変化を5年かけて取り組んでいく。
労務についてはいろいろ見えてきていて、鯖江市の労働環境の課題は、「給料が安い」「離職率が高い」「採用応募数が少ない」「高齢化」に加え、「技術伝承の遅れ」「分業化の限界」などがある。解決策として考えられるのは、HR(ヒューマンリソース)を重視した世界観。産地の中で人材育成をしっかりして、従業員のエンゲージメントを上げることなどに取り組みたい。
ツギが目指すこと、デザイナーの可能性
WWD:ツギはグラフィックデザインからブランディング、商品開発、プロジェクト運営、施設運営に加えて、自社ブランドも作っている。
新山:自社ブランドを作り地元の人に作ってもらったり、「SAVASTORE!」という小売店を立ち上げたり、福井のアンテナショップの運営を行うなど出口まで作ることを心掛けている。
WWD:自社ブランドを作る理由は?