スポーツ界のハラスメント根絶へ! 各界の頭脳がアドバイザーに集結し、「検定」実施の真意とは
なぜ「検定」なのか?
――スポーツハラスメントZERO協会では「スポーツハラスメント検定」を実施されていますが、なぜ検定をしようと思われたのですか? 佐伯:人が物事の良し悪しを判断する元になる概念形成は、さまざまな「学習」を通じてなされるものだと思います。その考えに基づいて、検定事業にこだわりました。たとえばハラスメントを行う方々は、そういう行いをしてしまう学習をどこかで、誰かからしてきているわけです。その学習が歪んだものや不健全なものだった場合、その人が良しとする基準や概念も間違ったままになってしまい、人を殴ったり、罵倒したりしても悪気がないような行為が起きてしまうわけです。ですから、その人の概念形成の起点となる学習の部分にアプローチして健全な認識を伝えることで、本質的な変化を起こしたいと考えています。時間はかかるかもしれませんが、啓発活動やセミナーとともに検定もその手段の一つだと考えているんです。 ――検定は初級から上級までありますが、それぞれどのような学習が求められるのでしょうか。 佐伯:初級は人権意識やスポーツハラスメントの感度を養うことを目指していて、中級と上級では、さらに高度で専門的な知識や具体的なアプローチを学べるようになっています。初級は2カ月に1回ぐらいのペースでやっていければと考えていて、初級合格者には「セーフガーディング検定」の受験資格も与えられます。 セーフガーディングとは、子どもや弱い立場の人々が関係者による虐待や危険に晒されないように取り組むべき責任のことで、今は世界のスポーツ界で重要視され、各所で義務化が進んでいます。たとえばラ・リーガのU-12の大会は必ずクラブからセーフガーディングオフィサーの任命と帯同が義務づけられて、リーグによる研修もあります。バスク自治州では、夏のキャンプやサッカースクールでもオフィサーの帯同が義務になっています。日本ではJリーグの育成部が先駆者として何年も続けていますが、近い将来、日本スポーツ界全体で義務化の流れになると思います。だからこそ、若者や子どもたちと関わる人たちにはぜひ、この検定を受けていただきたいなと思っています。 ――検定のテキストや問題を構成する際にこだわった点があれば教えてください。 佐伯:アドバイザーの方のアドバイスも反映しながら大幅に削り、最終的には60ぐらいの質問を用意しました。EU法などもカバーされている法学者の方がいるのは私たちの強みで、その方からグローバルスタンダードの視点で指摘を受け、修正を重ねました。また、理事の一人である多羅正祟氏がもともと構成作家としてクイズ番組などを作っていた経験があり、彼の知見を活かして、テキストも受講する方に面白いと思ってもらえるような工夫を凝らしています。