《ブラジル》画期的なドナー交換移植制度=3家族が腎臓提供を「交換」
ブラジルでは腎臓移植を待つ患者が4万人以上いる中、サンパウロ総合大学医学部付属のクリニカス病院で開発されたシステム「ペア移植(o transplante pareado)」が注目されている。この手法により、親族間では適合が得られず移植を諦めていた家族が、別の患者家族との組み合わせを通じてドナー交換を実現できるメカニズムだ。医師らはこの手法が待機患者を減少させる可能性があると考えていると10日付G1が報じた。 ブラジル臓器移植協会(ABTO)によると国内で肝臓、肺、心臓、膵臓などの臓器移植を待つ患者の中で、腎臓を必要とする人が大多数を占める。保健省データによれば腎臓移植の待機者は現在、4万1288人にのぼるという。 ブラジルの法律では、生体臓器移植のドナーは、配偶者または血縁関係が4親等までの者に限られているが、ペア移植の研究プロジェクトは司法許可を得ることで例外を設けた。 今年8月、ミナス・ジェライス州ジュイーズ・デ・フォーラ市のサンタカーザ病院で、このペア移植システムを用い、初めて3組の家族を組み合わせた生体移植が実施された。これまで2組の家族間では実現していたが、3組では前例がなかった。 ローザさん、ジャナイナさん、ヴァントゥイルさんはそれぞれ、親族に腎臓病患者がおり、臓器提供を希望していたが、互いに適合するドナーではなかった。だが、ペア移植の技術により別の患者と適合することが判明し、家族間で連帯することで「寄付の交換」が実現したのだ。 ローザさんはジャナイナさんの父セルジオさんへ、ジャナイナさんはヴァントゥイルさんの妻マリアさんへ、そしてヴァントゥイルさんはローザさんの妹アナさんへ、それぞれ腎臓を提供することとなった。 移植を行った腎臓内科医ジュリアナ・バストス氏は、「ペア移植は技術的にはシンプルな概念です。免疫学的に不適合な患者同士の間で交換を行い、適合するドナーと結びつけます。6人全員が同時に手術室に入りました。ドナーたちは間接的であれ、自分の親族の助けになっています。もし彼らが臓器提供しなければ、親族は移植を受けられないからです」と説明した。 ドナーとレシピエント(移植を受ける患者)は移植手術前、互いをあまり知らなかったというが、ローザさんは「みんな同じ部屋で目を覚まし、誰が誰に寄付したかを発見していきました。それは大変な喜びでした」と語った。3組の家族は現在も連絡を取り合っている。 移植を受けた一人、マリアさんは「移植がうまくいかずに、前と同じ日常に戻るのではないかと不安でしたが、お陰様で今はとても元気です。以前は制限されていた水も、今では好きなだけ飲むことができます。本当に幸せです」と新しい生活の喜びを分かち合った。 バストス医師は、「臓器提供の85%は死亡した人からのもので、生体ドナーの割合ははるかに少ないのが現状。ですがペア提供が全国的に実施されれば、待機者のリストを20%減らす可能性があります」と話した。