【松田浩(ガンバ大阪フットボール本部 本部長)インタビュー前編】アヤックスとの提携で見据える未来。スカウト、育成、ブランディング……ガンバ大阪の発展はマルチクラブネットワークとともに
FIFAクラブワールドカップで対戦を
――『1st Club Network Summit』終了後の所感として、松田さんは「お互いのフットボールフィロソフィーにおける共通性を改めて確認することができました」とコメントを残しています。育成の話に進む前提として、この発言に至った理由を聞かせて下さい。 「攻守に主導権を持つ……彼らは主導権を持つことを『(対戦相手ではなく)こちらが決めること』と定義していましたが、この考え方はガンバも大切にしているので、共通性があるとコメントしました。例えば、攻撃局面における主導権を持つこととは、正しいポジショニングでボールを保持することが重要になります。そして、それを体現するためには選手個々がボールを扱う技術の高さが必要で、それもガンバが伝統的に大事にしていることですよね」 ――さきほどアヤックスがガンバを提携相手とした理由をお聞きしましたが、逆にガンバがアヤックスを選んだ理由として、この共通性は重視しましたか? 「ガンバ大阪として欧州クラブとの提携を検討する中で、様々なクラブを調査して、複数のクラブを実際に訪問する中で、アヤックスは選手育成の面で共感することが多かったこともありますし、さきほどお話したスカウティング面でアドバンテージがある点も提携を決定した理由の1つです」 ――共通性を感じる部分があるからこそ提携している一方で、育成面で学ぶべき違いはありますか? 「ボールを扱う技術としては差がない……というより、日本人選手の方が巧いと感じることの方が多いかもしれないですね。違いがあるとすれば、その技術を試合の流れや、戦術に応じて使い分ける柔軟性の部分。日本代表が世界で勝てるようになってきたのは、選手たちが欧州の環境で経験を積んだのが大きいと思います。“使える”技術になったといいますか。ディシプリン(規律)の部分もそう。勝つために絶対に外してはいけないサッカーの本質的な要素は多々あって、そのノウハウの蓄積は欧州で実際に試合経験を積まないと身に付かない部分はあると思います」 ――そうした違いを学ぶためにも、ガンバ大阪のアカデミー年代の選手がアヤックスに短期留学したり、チームとして欧州に遠征したりということを計画されているのですね。 「具体的なスケジュールはこれからの検討ですが、選手だけではなく、指導者も含めた交流は積極的に行っていきたいと考えています。アヤックスの国際部で部長を務めるコルネさんと話したのは、近い将来に『1st Club Network Summit』に参加した提携4クラブのU-17選抜チームとアヤックスU-17チームと試合や、異文化交流のイベントを開催できたら選手にとって良い経験になるよねと。あとは、アヤックスが育成年代を対象とした『Future Cup』を定期開催しているので、そこでガンバユースの力を示すことも直近で実現したいことの1つですね」 ――最後に『フットボール戦略パートナーシップ』に関する今後の展望を聞かせて下さい。今夏は欧州クラブが数多く来日しますが、アヤックスとガンバ大阪の親善試合を楽しみにしているファン・サポーターは多いと思います。 「親善試合は具体的に話が進んでいる訳ではないですが、現実味があるアイデアだと思います。あと、夢みたいな話に聞こえるかもしれませんが、ガンバはアジア王者、アヤックスは欧州王者、アトレチコ・パラナエンセは南米王者、CF パチューカは北中米王者として、ネットワーククラブがFIFAクラブワールドカップで対戦する未来を実現させたいですね」 Photos:(C)GAMBA OSAKA
[ライタープロフィール] 玉利剛一(たまり・こういち) 1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。その後、筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。2019年よりフットボリスタ編集部所属。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆を行っている。 ※インタビュー後編は今シーズンからガンバ大阪に設立された「フットボール本部」の活動や、トップチームの「シーズン前半戦レビュー」をテーマとした内容になります。来週後半に公開予定。お楽しみに!
玉利剛一(フットボリスタ編集部)